見た瞬間「あ、好きになりそう」
私はひとつの特技を持っている。誰かと初めて会ったとき、数秒で「自分と合うかどうか」が分かるのだ。そのときに「絶対合う!」とビビッと来た人とは、その後に間違いなく深く仲良くなれる。この仕事を始めてから気づいたのは、実はそれがクルマにも当てはまるということ。もちろん、人もクルマもそうそう「ビビッ」と来るものはないのだが……。
ところが、プジョー新型508は実車を見た瞬間「あ、これは好きになりそう」と久々に感じたクルマだった。
先に写真で見ていたときには、フロントのライトまわりのデザインが以前とがらりと変わって「ちょっとやりすぎでは」と思っていたのだが、直接面と向かってみると、ライトによってキリッと引き締まった表情と、なめらかにリアまでつながるファストバックスタイルが絶妙にマッチしている。セダンともクーペとも形容できない、その美しいデザインを見ていると、乗る前からすでに「何か新しいことが始まりそう」という期待が高まってくる。
ドキドキしながらドアを開けると、その運転席まわりのデザインに衝撃を受けた。ドライバーを包み込み、すべての機器類がこちらを向いているような、まさにコックピットといえるデザイン。シートには幾何学模様のステッチが入っていて、さらにハンドルがとても小径なので、運転席だけをパッと見ると、もはやクルマではないようにも見える。シートに腰掛けると航空機か何かロボットの操縦席のようで、ドライバーというよりはパイロットになった気分だ。
2リッターディーゼルターボは心躍る滑らかさ
最初に試乗したのは、2リッターディーゼルターボエンジン(177ps/400Nm)を搭載した508 GT BlueHDi。
以前からプジョーのディーゼルエンジンは滑らかだと思っていたのだが、今回508のディーゼルモデルに乗って、改めて「なんて気持ちの良いエンジンなんだろう」と感じた。低速からトルクが出るのは他のディーゼルエンジンも同じだが、そこから加速していってもまったく引っかかりがなく、エンジンからトランスミッションや様々な機器を経ながらも、滑らかにパワーがタイヤへと伝わっていく。モーターもトルクのつながりが滑らかではあるけれど、やはりエンジンは体の中心をくすぐられているような、何かが湧き上がってくるような、モーターとは違った心を躍らせるものがある。