妻子失い「地獄絵図」 大金目当て資産家狙う 松戸の社長宅強殺放火 【回顧・千葉の事件から】

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妻子が殺害され放火された社長宅。取り壊され現在は防犯・防災拠点施設が建てられている=松戸市常盤平6

 「地獄絵図だった」。自宅で目の当たりにした光景に、マブチモーター社長の男性(69)は言葉を失った。2002(平成14)年8月、社長の妻(66)と長女(40)が殺害され、自宅に火を付けられる強盗殺人、放火事件が発生。宅配業者を装い押し入った男2人の犯行だった。

◆犯人像絞れず

 まだ真夏の暑さが厳しい同5日午後4時前、松戸市の新京成電鉄常盤平駅から約1キロの閑静な住宅街で、樹木に囲まれた白塗り洋風造り2階建ての社長宅1、2階の一部を焼く火災が起きた。

 火はすぐに消し止められたが、社長の妻が1階居間で、長女は2階寝室で遺体で見つかり、首にネクタイが巻かれ、顔に粘着テープが貼られるなどしていた。遺体や周囲にガソリンがまかれ火が付けられ、現金数十万円と1千万円相当の貴金属がなくなっていた。

 社長は当日、妻と長女が好きなケーキを予約していた。食べられることのなかったケーキは、妻の誕生日と重なった告別式で霊前に供えられた。

 残忍な手口から、当初は恨みによる犯行の見方が強かったが、現金や貴金属がなくなっていたことで物取りの可能性も考えられた。さらに多額の金品が手付かずだった不自然さがあり、恨みか金品目当てか、犯人像が絞り込めないでいた。

◆服役中に計画

 手掛かりがなく3年が過ぎた05年9月、捜査は大きく動き出す。窃盗を繰り返し群馬県警に逮捕された62歳と55歳の男2人が、事件に関与した疑いが浮上。千葉県警は、事件後に他人名義のパスポートで海外渡航するなどした旅券法違反容疑などで2人を逮捕し、10月に強盗殺人と放火の疑いで再逮捕した。

 2人はそれぞれ監禁強盗事件、殺人事件で服役中に宮城刑務所で知り合い、資産家から金品を奪う計画を練っていた。「10億円ぐらい手に入る」「大金が入れば、ばら色の人生が送れる」。動機は実に身勝手で短絡的だった。

 松戸の事件後の02年9~11月、東京都内の男性歯科医(71)と我孫子市の金券ショップ経営者の妻(65)がそれぞれ殺害され、計約140万円などが強奪された事件も2人によるものだった。社長宅で思ったほどの大金が奪えず、豪遊して金が尽きた末の犯行だった。

◆男2人に極刑

 金品目的に4カ月足らずのうちに4人の命を奪う、まれにみる凶悪な連続強盗殺人。一審千葉地裁で2人に死刑判決が言い渡され、その後判決が確定。畠山(旧姓小田島)鉄男、守田克実の両被告は死刑囚となり、畠山死刑囚は17年9月に東京拘置所で病死した。

 「なぜわが妻と娘なのか」。当時、苦悩する心情を明らかにした社長。後年、受刑者の自立支援を求める再犯防止策を法務大臣宛てに提言。社会復帰のために勉強や職業訓練を刑務所で行うよう訴えた。

 妻子の命を奪われた自宅は取り壊し、跡地を市に寄贈。現在は防犯・防災拠点施設が建てられている。

 (年齢や肩書、名称などは当時)