圧勝の行方 4期目の朝長市政・下 次の戦い 有力者意欲 激戦の予感

4選を確実にした朝長氏(左)を訪ね、握手する宮島氏=21日夜、佐世保市下京町の選挙事務所

 昨年12月、佐世保市役所の応接室。市長の朝長則男は、県議選の出馬あいさつで訪れた元衆院議員、宮島大典と向かい合った。宮島は、県議へのくら替えを後援会に表明した際、「将来的に市長を目指す」と宣言。それは朝長の耳にも入っていた。
 「お互いに頑張りましょう」。2人はいくつかの言葉を交わし、別れた。
 4月7日、県議選の投開票日。宮島は約2万3千票を集め、トップ当選を果たした。2万票を超えたのは県議時代の朝長以来だった。党籍を置く国民民主ではなく、無所属からの出馬も奏功。自民のある県議は「保守票も奪い取り、1人で3人分を集めた。まるでモンスターだ」と驚愕(きょうがく)した。
 この結果で、宮島は「ポスト朝長」を目指すレースの有力候補という印象を強めた。一部からは「朝長と宮島の関係は悪くない。禅譲の可能性もあるのではないか」ともささやかれる。しかし、2人の長年の支援者からは「相いれない」という声が聞こえる。
 朝長は、1998年にあった衆院補選の自民党公認争いで宮島に敗れた。公認を得た宮島は初当選し、国政への道を開いた。県議にとどまった朝長が2007年に初挑戦した市長選の相手は、現在、宮島の後援会幹部で、前市長の光武顕から後継指名を受けていた。このときは佐世保を二分する激戦になった。「深い溝は今も埋まっていない」という。
 次期市長選を巡っては、出馬の意欲を示す若手市議もいる。市議選の個人演説会で応援弁士に立ったある県議は「もっと高い場所へ行かせる」と持ち上げた。このほか、地元の県議や経済界の動向も注目される。
 朝長は5期目への挑戦について「今の段階で判断することではない」と言及を避ける。4選出馬を表明した昨年秋の会見では、任期中に後継者を育成するか問われ、「それは私ではなく、市民がつくるものだ」と語った。その真意を、あるベテラン市議は「心身ともに充実している。5期目は十分にあり得るということだ」と読み解く。
 4選の当確が出た朝長の選挙事務所には、宮島も姿を見せ、2人は握手を交わした。次の戦いは、だれが名乗りを上げるのか-。まだ構図は見通せないが、「激戦になる」。多くの関係者はそんな予感を抱いている。
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