平戸いのししプロジェクト 高品質な肉 首都圏へ

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平戸で捕獲されたイノシシ肉を使ったジビエ料理(IMFホールディングス提供)

 平戸市に事業所を置くIMFホールディングス(東京)が、有害鳥獣のイノシシの肉を「平戸いのしし」としてブランド化するプロジェクトを進めている。市内で捕らえて処理したイノシシ肉を首都圏などの高級レストランに販売し、好評を得ている。市内に新工場建設も計画中だ。
 市によると、平戸では2016年度に約5600頭のイノシシが捕獲され、農作物被害は約2250万円に上った。これまでは一部が食用として消費されていたが、大半は焼却後に地中に埋めて処分していた。
 このため、同市出身で養豚事業などを手掛けるIMFの市山幹雄社長(70)が地域貢献をしたいと市に提案。事業化の足がかりとして17年、田平町に食肉処理をする事業所「平戸ファクトリー」を設立した。
 IMFは、オレイン酸を多く含むドングリが平戸に多く自生し、高級なイベリコ豚に近い肉質のイノシシが多いことに着目。臭みのない高品質な肉にするための手法を確立した。猟友会が捕獲後、肉の扱いに精通した従業員が内臓や骨を素早く処理し、酸性電解水で洗浄。金属探知機で異物がないか確認した後、急速冷凍する。菌検査を経て千葉県の加工場に出荷する流れだ。
 平戸ファクトリーは現在、年間約800頭を処理。イノシシ肉は地元レストランでしゃぶしゃぶとして提供していたが、昨年11月からブランド構築に乗りだし、関東・関西の高級店を中心にサンプルを送った。上質な味わいは一流シェフらも評価し、20店舗以上でロースやばら肉などが創作ジビエ料理などとして提供され、好評を得ている。店には通常のイノシシ肉よりも高値で卸しているという。
 捕獲の担い手になっている市内の猟友会員は高齢化が進んでいる。平戸ファクトリーの市山宗所長(39)は「ブランド化によって、存続が危ぶまれる猟友会の収入補塡(ほてん)のほか、技術を継承する若手の育成にも貢献できれば」と話す。
 雇用創出にも期待が懸かる。平戸ファクトリーは地元から5人を採用。年内を目標に同市古江町に2千頭規模の処理能力を持つ新工場を建設する計画で、増員も予定している。商品のネット販売や、人が口にできる高品質な犬の餌の開発も手掛ける考えだ。
 「将来的には平戸単独の事業として成立させ、地域の浮揚につなげたい」と市山所長。行政や地元企業との連携にも意欲的だ。害獣を生かした産業の創出は、若年層の人材流出が続く平戸を活性化する起爆剤にもなると期待されている。

平戸で捕獲されたイノシシの肉を部位ごとに袋詰めする「平戸ファクトリー」の従業員=平戸市田平町