<レスリング>【2019年アジア選手権・特集】屈辱の銀メダルを機に、独り立ちを目指す…女子62kg級・川井友香子(至学館大)

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準決勝で難敵・北朝鮮を破った川井友香子(至学館大)だが…

 【西安(中国)/文=布施鋼治、写真提供=UWWオフィシャルカメラマン・保高幸子】

 「あと何秒か我慢していたら金メダルだったと思うと、すごく悔しいです」-。

 2019年アジア選手権第4日。女子62㎏級の川井友香子(至学館大)は、決勝で昨年のアジア大会2位のアイスル・チニベコワ(キルギス)と激突。第2ピリオド中盤まで6-1とリードを奪いながら、ラスト6秒に逆転負けを喫した。「最後まで攻めなければいけないというのはわかっていたけど、自分の攻めに自信がなかった」

 その直前、タックルを仕掛け、がぶられた時、川井は気持ちに迷いがあったことを否定しない。「そのまま行かなければいけないという気持ちがある一方で、下になったまま時間待ちをしようという気持ちも少しありました」

 チベニコワは過去何度も日本人選手とも手を合わせている古豪。川井も事前に情報は十分に仕入れていたが、土壇場で勝負をひっくり返されてしまった格好だ。「一番の感想は自分に負けたということ」

 2回戦では2016年リオデジャネイロ・オリンピック58kg級銅メダルのサクシ・マリク(インド)をフォールで撃破。続く準決勝ではパク・ヨンミ(北朝鮮)に残り10秒というところでバックを奪い、5-4で逆転勝利を収めている。この一戦が最も印象に残っているという。

「来る前に調べたりしたんですけど、情報があまりなくて、どういう選手なのかも全然分からなかった。62㎏級の選手にしては小さくて、自分の周囲には同タイプがいないような選手だった。ちょっとやりにくかったです。最後の方は焦って自分から突っこんだりしてしまったりしたけど、最後まで諦めずに闘おうという気持ちが強かった。勝てて良かった」

姉妹で東京オリンピックを目指す目標は不変

 昨年の世界選手権(ハンガリー)でも、川井は準優勝を果たしている。同じ銀メダルでもその意味合いは大きく異なるという。「世界選手権の時は、自分が決勝までいけるとは思っていなかったので、うれしさもある銀メダルだった。今回は自分の弱さが露呈したうえでの銀メダルですからね…」

決勝はラスト6秒で敗れた

 過去の海外遠征と比べると、ほかにも大きな違いがあった。ほとんどいつも一緒にいる姉・梨紗子(ジャパンビバレッジ)がいなかった。川井は「自分には『梨紗子にいつもベッタリ』というイメージがあると思う」と苦笑いしながら、この遠征前に決めたことを話し始めた。

 「やっぱり年齢的にも、東京オリンピックが終わってからのことも考えると自分もひとりの選手として自立して強くならないといけない」

 もちろん、東京オリンピックに姉妹揃って出場するという目標は変わらない。これからも練習では姉と切磋琢磨しながら力をつけていきたいと思っている。それでも姉は姉だし、自分は自分。来年社会人となる友香子は精神的に一人立ちしようとしているのか。

 「東京オリンピックに向けて、62㎏級に階級を変えてくる選手もたくさんいる。これからは国内でもさらに厳しい闘いが繰り広げられると思う。でも、(全日本選抜選手権で伊調との3度目の頂上対決を実現させる可能性が高い)梨紗子は、自分なんかより何倍も不安だと思う。そう考えると、自分が不安だなんていっていられない」

 話が今秋の世界選手権になっても、川井は慎重だった。「優勝を目指したいけど、いまの自分の実力から判断すると、まずはメダルを取ることを目標にしたい。周囲の評価に自分の本当の実力が全然追いついていない。そこを追いつかせるところから始めていきたい」

 今大会の屈辱を胸に秘めながら、川井は着実に一歩ずつ前に進もうとしている。