小学校跡にホテル、避難所の地下化に住民反発「まるで防空壕」

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ホテル化される計画がある元植柳小(奥)。手前の公園地下に体育館を整備し、避難所にする案が波紋を広げる=京都市下京区

 京都市下京区の元植柳小跡地で進むホテル建設計画で、市と事業者側が、災害時の避難所に指定されている同校体育館を近くの児童公園地下に移設し、避難所に再指定する案を提示していることが分かった。住民の一部が「まるで防空壕(ごう)だ。災害時に周りの状況が分からない」と反発する。

 9年前に閉校した同校の跡地活用のため、地元代表として植柳自治連合会副会長や大学教授ら6人による選定委員会が、3事業者が提案した計画案を審議。昨年6月~今年2月の計5回の会合をへて、タイの高級ホテルの誘致を示した安田不動産(東京)を契約候補事業者に選んだ。

 同社の提案によると、跡地を60年間借り、客室数約160のホテルを建設。校舎とともに併設の体育館を解体して公園の地下に再整備。10メートルほど掘り、エレベーターや階段を整備して住民の交流やスポーツの場にする。避難所に指定し、地震発生時などには住民の滞在場所として活用する。ただ、水害時には浸水の恐れがあるためホテルを避難所として住民に開放するという。

 市が2月下旬にこの案を公表すると、一部の住民が猛反対。10人強でつくる「植柳校跡地問題を考える会」の大屋峻代表は「災害時に住民を地下に押し込めるなんて非常識だ」と憤る。水害時などで避難所となる予定のホテルについては「宿泊客が多ければ避難に支障が出る」と問題視。「高齢化する地元にとって、利便性の高い商業施設などの方が良かった」と話す。

 市は安田不動産と近く基本協定を結んだ後、自治連を加えた3者の事前協議会を設け、避難マニュアル作りなどを進める方針。市資産活用推進室は「選定委員会には地元代表の委員も加わって議論した。もし3者の事前協議で合意できなければ、優先交渉権は別の提案事業者に移る」とする。

 京都大防災研究所の牧紀男教授(防災学)によると、地下体育館とホテルを避難所に同時指定した場合、全国的に極めて珍しいケースになるという。「地下避難所は、エレベーターが止まった地震時でも高齢者が避難できるのか懸念される」と指摘。ホテルを水害時などの避難所に指定する案に関しては「住民の受け入れ方などホテル側と住民の念入りな協議が不可欠だ」と語る。

■誘致手法、透明性欠く

 元植柳小跡地(京都市下京区)を活用したホテル建設計画案を巡り一部の住民が不信感を募らせた背景には、事業者名やその提案内容、選定に関わる委員会の審議を一律非公開にした市の対応がある。有識者からは「透明性の確保」を求める声が上がる。学校跡地に次々とホテルを誘致する京都市の観光推進の施策が住民の総意を積み上げているのか、という問題を提起している。

 財政難の市にとって、運動場などまとまった敷地のある学校跡は、安定的な貸付料収入を見込めるいわば「虎の子」だ。外国人観光客の急増に伴うホテル開発ラッシュで市内の用地取得が年々難しくなる中、開発業者にしても魅力的に映る。複数業者の提案を比べる「公募型プロポーザル」と呼ばれる今回の手法は、清水小(東山区)、白川小(同)、立誠小(中京区)跡地のホテル計画でも取り入れられた。

 地元の代表者も加えた委員会が事業者からの提案を審査するが、市は「企業秘密を守る。もし落選しても他の学校跡地の活用でまた提案するかもしれない」との理由から選定過程の議論を非公開にし、委員には守秘義務を課す。

 どこの事業者がどのような施設を建てるのか―。地元代表の委員以外の地域住民には、契約の候補事業者が決まって計画案が公表されるまで具体的に分からない仕組みだ。同志社大の新川達郎教授(公共政策論)は、市の非公開の対応について、「審議の節目ごとに、地域住民に一定の情報開示をするのが当然だ」と話す。

 市内の多くの小学校は明治時代に町衆の寄付で設立された元番組小で、住民の愛着は強い。ましてや避難所の再指定は住民の安全に直結する。市のいう「地元の代表者」は、「地域の総意」を担っているわけではない。市には跡地活用策を公募する段階から、幅広い住民の多様な意見を、議論に反映させる姿勢が求められている。