平成の終幕

 地平線というのは一体どこにあるんだろう。そう思って、地の果てと空との境目を目指しても、常にその線はかなたに見える。矛盾するようだが、誰も地平線にたどり着けないけれど、誰もが地平線に立つことができる▲時代の変わり目も同じかもしれない。前と後で、何かがにわかに、劇的に変わるわけではない。連続しているのだが、遠い後年から見ると、時代と時代に境界線が引かれ、地と空のようにその風景は違うのだろう▲いま私たちは地平線の上にいて、天皇陛下がきょう退位され、平成が幕を閉じる。退位は江戸時代以来、ほぼ200年ぶりで、平成という時代は弔意を伴わずに終わる▲思えば陛下が2016年、象徴天皇の務めが「安定的に続いていくこと」を念じて、退位の意向をビデオメッセージで発したのがきっかけだった。思いを国民の多くが支持し、国会で一代限りの特例法ができた▲国会という場を通じて退位への道を国民が敷いたともいえる。平成の終幕がさみしく、それでいて穏やかにも感じられるのは、先の時代の安定、安寧を願って退位に至ったいきさつと、決して無縁ではあるまい▲地平線上で、きょうという日をいつもの休日と変わりなく過ごす人も多いだろう。ただ穏やかに、心で平成の歳月に「さよなら」と手を振りながら。(徹)

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