平成でアニメはどう変わった? 『KING OF PRISM』が打ち出した、新しい楽しみ方

©株式会社J-WAVE

平成のアニメを振り返った、J-WAVEで放送中の番組『TRUME TIME AND TIDE』(ナビゲーター:市川紗椰)。4月27日(土)のオンエアでは、アニメ評論家の藤津亮太さんが登場しました。

■作品数が多いのは、いいこと? 悪いこと?

藤津さんは、小学4年生だった1978年に宮崎 駿さんの第一回監督作品『未来少年コナン』、翌年に『機動戦士ガンダム』シリーズ、劇場版の『銀河鉄道999』に洗礼を受けました。そこで「俺はアニメが好きなんだ」とスイッチが入り、アニメ評論家の道に進むきっかけになったそうです。藤津さんが考えるアニメ評論家の役割は「見通しを良くすること」だそうです。

藤津:一本の作品を観て「おもしろかった」と思っても、その先はあまり言葉にならなかったり、なぜ面白かったのかまでは考えないじゃないですか。そこを、「ここがこうだからおもしろいんじゃないですか?」とか、「ここが不思議なのは、こういう理由じゃないですか?」と文章にすることで、いろいろな人の見通しがよくなるといいなと思っています。
市川:腑に落ちるような感じになるわけですね?
藤津:カルチャーセンターなんかで講座をやりますが、基本的に腑に落ちることを一番の目標にしています。

藤津さんは、毎クールの始まりには20本強のアニメをチェックしているということですが、徐々に物理的に観られなくなるため、配信も利用してフォローしているそうです。

市川:作品の数が多すぎると思いませんか?
藤津:多いけどそれには利点もあって、これが半分であれば個性的な企画は通らない可能性がある訳です。そういう意味では、いろいろな企画が通る可能性があるのはプラスな面ではあるんです。ただ、作品を作り上げるという意味では、現場もかなり大変だという話も聞くので、そこはプラスとマイナスが裏表だなという感じです。

Netflixに代表される配信作品は、「これから影響が大きくなる」とのこと。

藤津:先行指標は音楽だと言われています。音楽は、CDが売れなくなったあとにサブスプリクションとライブに移行しました。映像もそうなるだろうと言われていて、アニメはいち早く実験的に移行しつつあるイメージです。ただ、テレビで放映しないと存在感がないということもあるので、テレビと全く縁が切れてしまうのではなく、並列していくと思います。どういう形で並列していくのがいいかは、これから正しい塩梅が見えてくるでしょう。

■最近のアニメで印象的だったのは

最近、藤津さんの印象に残った作品は、今年の1月からスタートした『どろろ』と『約束のネバーランド』。

藤津:原作は漫画ですが、きちんとアニメとして面白く作られています。
市川:どちらも好きです。
藤津:『どろろ』は原作で書かれている要素を見事に再構成して、足りないところはオリジナルを足して原作のよさが活きるようにしています。(原作者)手筭治虫先生は原作をあまり気に入っていなかったという話をされていますし、50年前にアニメ化されたときも、途中で人気がなくて路線変更してるんです。そういう作品が半世紀を超えて、本来だったら描かれるはずだったようなテーマに近づいている感じがドキドキしますね。

市川は、「最近は妖怪っぽいものが多いですよね」とトレンドを分析しました。

藤津:『妖怪ウォッチ』シリーズあたりから当たっていて、今は『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズも放送しています。半世紀前にも妖怪ブームがあって、1970年前後は時代がざわついていたので、そういう気分と妖怪がリンクしているのもかもしれません。

『約束のネバーランド』は、原作と照らし合わせながら観たそうです。

藤津:ちょっとした差異で、映像表現として面白くする作りになっています。例えば、原作では理屈を言ってから感情を言うけど、「優しい子だから先に心配する台詞をもってきて、そのあとで状況を説明する台詞を持ってくる」みたいな配慮がなされています。それによって、原作よりもキャラクターが明確になっていたりと、細かな味付けが丁寧で観ていて楽しいと思いました。

■アニメの歴史のなかで平成が占める割合

続いて、平成のアニメを振り返りました。日本の国産アニメの歴史は2017年に100年を迎えました。平成は、そのうちの30年。つまり、およそ3割を占めることになります。

藤津:産業化して映画館やテレビでアニメが観られるようになった最初の作品は、1958年に公開された『白蛇伝』。そこからカウントするとだいたい60年なので、アニメの歴史の半分は平成と言えます。スポンサーがお金を出してゴールデンタイムにアニメを放映する形から、深夜アニメへと移行し、さらに配信も……テレビとの距離が大きく変わったのが平成時代のアニメです。今はゴールデンタイムに放映しているアニメはわずかですから。
市川:そうですね。
藤津:少子化とかで視聴率が取れなくなったときの生き残り方として、土日の朝の子どもに向けたゾーン、そして大人のゾーンとして深夜枠が生まれました。本格的に普及したのが今からざっと20年くらい前のことなので、平成の後半3分の2は深夜アニメの時代がやってきたんです。

アニメ製作で最も大きく変わったのはコンピュータが本格的に導入されたこと。以前は、「セル画」をフィルムカメラで撮影していましたが、仕上げと撮影の工程がデジタル化され、現在は作画もデジタル処理したりキャラクターを3DCGで描くなど、デジタル化が進行しました。

■アニメの新しい楽しみ方を生んだ『KING OF PRISM』シリーズ

次の節目になる作品として藤津さんが注目しているのが、4月から新シリーズのテレビ放送も始まった『KING OF PRISM』シリーズ。

藤津:音楽が配信とライブに移行したときに、アニメでライブに相当するものはどういうものか、という問題がありました。ひとつは2.5次元の舞台やイベントだと言われていましたが、一つの作品でビジネス的に大きくなることはないんです。そういった中で『KING OF PRISM』シリーズが映画館での“応援上映”という新しい楽しみ方を完全に定着させました。
市川:始めは不思議な感じでしたよね。
藤津:映画館をひとつのライブ会場と見立てて、ちょうどその頃に「大音量でいい音で聴く」という潮流もあって、アニメのライブ化に一つの結論が出ました。

さらに藤津さんは、映画『リズと青い鳥』についても語りました。

藤津:吹奏楽部で仲良しだと思っていたふたりの女の子がいて、1人は活発でもう1人は内向的。活発な子は内向的な子に「ついていてあげなければ」と思っているのですが、内向的な子のほうが楽器が上手かったことから、「実はその依存関係は逆だったのでは」と思い悩む。そんな話を、すごく丁寧に描いています。女の子同士の微妙な距離感を描くところも今のアニメっぽいです。たとえば、「相手が抱きついてきて抱き返すけど、その手が下の位置にあるので気持ちが入っていない感じになっている」とか。そういう繊細な表現を積み重ねで、ここまで研ぎ澄まされているんだと感じる、インパクトのある作品でした。

藤津さんが今回紹介してくれた作品の数々、ぜひチェックしてみてください!

この記事の放送回をradikoで聴く
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『TRUME TIME AND TIDE』
放送日時:毎週土曜 21時−21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/timeandtide/

【関連タグ】
TRUME TIME AND TIDE   アニメ   エンタメ   市川紗椰