かつてない「変わり目」

 敬うとともに親しみの情を抱くことを「敬愛する」と言う。国民への「深い信頼と敬愛」があって務めを果たせたという最後のお言葉を聞き、天皇陛下と国民と、その関係は実に和やかだったのだと思いを深くする。きのうをもって皇位を退かれた▲国民との間で、お互いに敬愛の念、感謝の念を抱きながら、表しながら平成の世が終わった。これほど和やかに、穏やかに幕を閉じた時代はかつてなかっただろう▲思えば昭和が終わったときは、社会全体が喪に服しながら激動の時代に思いをはせ、とても心静かではいられなかった覚えがある。30年前と今と、終幕は大いに違った▲新時代の始まりもまた、平成に変わったときとはずいぶん違う感じだろう。きょうが即位の日だと前から知っている。新元号は令和だと、ひと月前から分かっている。「とうとうこの日がやってきた」と皆で新時代を迎えるのは、かつてなかったことだろう▲いまお読みの本紙の上の方に、きょうの日にちが記され、「令和元年」とある。しばらくの間、生活のあちこちに「令和」の文字を見つけては新鮮味を覚えるに違いない▲催しでも私事でも、何かにつけて「平成最後の」と言われてきたが、きょうから「令和最初の」へと変わる。とうとうやってきたこの日を、晴れやかで忘れがたい一日に。(徹)

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