東京マイスター 41

東京都 広報東京都令和元年5月号

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使い手の思いを形に
かばん・袋物製造工 鮎澤(あゆさわ) 剛(つよし)さん(平成27年度受賞)

上質な革で仕立てられた、世界にひとつだけの鞄や革小物。使い込むほどに艶や風合いが増し、なんともいえない愛着が生まれる。

神楽坂の一角に工房を構える鮎澤剛さんは、あらゆる革を扱うスペシャリスト。一般的な素材である牛革に加えて、ワニ、ゾウ、オーストリッチ(ダチョウ)、トカゲといった希少価値の高い素材に関する専門知識も持ちあわせる。
「牛革と爬虫(はちゅう)類の仕立ては、洋服に例えると、ジーンズとフォーマルスーツくらいの違いがある。僕は何でも作れるようになりたくて両方で勉強をした。そこが珍しいのではないでしょうか」。
13年前、「近所の上手な鞄屋さんになれれば」、くらいの気持ちで工房兼店舗を開いたところ、お客さんの方が鮎澤さんのファンに。気付けば、制作に入るまで数年待ちが必至の店になった。
「オーダーメイドなので、お客さんの思いをくみ取り、それを形にすることが重要な仕事。デザインを起こし、原寸大のサンプルを作って調整を行い、革や金具を選ぶ、などの工程が必要なため、完成まで時間を要します。お待ちいただくことは心苦しいですが、待つ時間より、その後使う時間の方が長い。そうやってお客さんの人生の一部分に関わっているところに魅力を感じています」。
丁寧な仕事に定評がある。形状や用途によって、ミシンと手縫いを使い分け、時にはクラシックカーのシート張り替えのような特殊な依頼にも対応する。難しい仕事になることは明白だが、「共感できるから」「面白そうだから」引き受ける。
同時に定期的なメンテナンスも勧める。長持ちさせる秘訣を訊(たず)ねると、「恥ずかしいけれど、愛かな」とにこやかに答えてくれた。

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