「帰っておいで」と

 昔も今も、親心とは変わらないものだろう。20年ほど前の広告コピーにある。〈「忙しいなら無理して帰らなくていいよ。」は、ほとんどの場合、嘘(うそ)です〉。帰っておいで、と言いたくても言えない▲仕事を抱え、帰省のままならない子どもを「帰らなくてもいいよ」と気遣う声が、あちこちで発せられたに違いない。「超」の付く大型連休は、きょうを含めてあと3日となった。サービス業で、飲食業で、もう何日も働き続けている人は、きっと数多い▲連休前の数字だが、民間のインターネット調査サイトの県民アンケートによると、10連休を「取れそう」と半数が答え、「取れなさそう」「1日も休めなさそう」は7%余りいた▲10日間のうち何日か出勤した人、する人もいて「仕事がたまり、滞るから」とも「ずっと休めば給料がぐんと減るから」とも聞く。国民の間で、こんなにも休日の数がばらついた連休は過去にあるまい▲思えば改元した1日は、多くの新社会人にとって「社会に出て1カ月」という日だった。ずっと前、新人の頃のわが身に照らせば、戸惑い、気が張ったまま迎えたゴールデンウイークではなかったろうか▲船体を母港のドックに運ぶ。そんな気持ちで帰省を待ち、いま働き続ける人に、そろそろ「帰っておいで」と言う頃合いだろう。(徹)

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