東京工業大学、地球規模の炭素循環に微生物活動の寄与を発見

地球を構成する炭素のうち90%は地球内部のコア、マントル、地殻が占め、残りは表層の海洋、大気圏、生物圏に分配されている。

表層の炭素はプレートの沈み込み帯で地球内部へ運ばれていくが、その一部は沈み込みの途中で二酸化炭素となり、火山や熱水として放出され再度表層に供給される。今回、東京工業大学、オックスフォード大学などの国際共同研究チームは、この過程に微生物活動の影響があること、および沈み込み帯から前弧域(火山弧までの間の領域)への炭素供給量がこれまでの推定より2桁大きい値となることを明らかにした。

炭素循環とそれに関わるプロセス解明のため、国際共同研究機関「Deep Carbon Observatory(深部炭素観測)」のプロジェクト「Biology Meets Subduction」は、海洋プレートが沈み込んで形成された火山弧の国コスタリカで、温泉・噴出口調査を実施した。

採取した温泉水や噴出ガス中の、ヘリウムや二酸化炭素の同位体比、溶存無機及び有機炭素の同位体比などから解析したところ、沈み込み帯から前弧域へ供給される二酸化炭素の約90%は地殻中のカルシウムなどと結合して炭酸塩となり、さらに、微生物による炭素固定で有機炭素となって温泉水中に溶存することがわかった。

これまで沈み込み帯から表層へ炭素が供給される過程に生物活動の影響は考慮されていなかったが、今回の解析により、微生物の炭素固定の影響があることが初めて示された。

微生物活動を含めた新たな炭素循環モデルでは、前弧域へ供給される炭素量がこれまでの推定より2桁大きくなるという。このことは、沈み込み帯でマントルへ戻る炭素量がこれまでの推定値より大幅に小さくなることを意味する。

この新たな発見は、地球規模での炭素収支の再評価につながると考えられている。

論文情報:【Nature】Forearc carbon sink reduces long-term volatile recycling into the mantle

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