「給料支払われた?」が挨拶代わり…元DeNA久保康友、過酷な環境で奮闘中

メキシカンリーグのブラボス・デ・レオンでプレーする久保康友【写真:球団提供】

8回5失点9Kの力投も3勝目はならず、チームは2連勝「勝ててよかった」

 メキシカンリーグのブラボス・デ・レオンでプレーする元DeNAの久保康友投手が4日(日本時間5日)、本拠地レオンで行われたヘネラレス・デ・ドゥランゴ戦に先発し、今季最長となる8回1/3を投げたが、勝ち負けは付かず、3勝目はお預けとなった。10安打5失点(自責4)、9奪三振。試合は延長10回、ブラボスが6-5でサヨナラ勝ちを収め、2連勝で11勝15敗。南地区単独4位となった。

 粘りの投球だった。久保は3回、四球と2本の適時打で2点を先制されると、7回、8回にもソロ本塁打を浴び、0-4。だが8回、ようやく味方の打線が4点を奪い、同点に追いついて9回に突入。続投を志願した久保は1死から右前打と四球を許したところで元巨人の抑え、マニー・アコスタ投手にマウンドを譲った。

 アコスタはその後、内野の失策の間に1点を失ったが、その裏、レオンは同点に追いつき、久保の黒星が消えると、延長10回にサヨナラ勝ち。アコスタが今季3勝目を挙げた。今季最多117球を投げた久保は「今日は完投するつもりだった。2本の本塁打のうち、1本は制球ミス。1本はコースは悪くなかったが、相手に上手く打たれた。なかなか打線の援護がもらえなかったが、最後はチームが勝ててよかった」と、サヨナラ勝ちを喜んだ。

 リリーフとして登板した本拠地での4月30日のレオネス・デ・ユカタン戦から中3日での登板。前回の先発後、不安のあるリリーフ陣を助けるため、ブルペンでの調整代わりに、先発と先発の合間に中継ぎとして登板することを監督から依頼されていた久保。海抜0メートルのカンクンから海抜約1800メートルのレオンに戻って行われたレオネス戦では救援に失敗していたが、その後、2度ブルペン入りして高地仕様へと調整していた。

3試合計46失点でチーム内口論も、一部給料未払い続き合言葉は「給料支払われた?」

 レオンは気候が乾燥しているため湿気のないボールは操りにくく、気圧が低いため変化球が落ちにくく、打球が飛び、さらに球場が狭いため、投手にとっては四重苦の球場。この日は「今までの登板で一番空気が乾燥していてボールが扱いにくい」と話し、試合前のブルペンでもカーブの制球に苦戦していたが、それでもスプリットを駆使し、9三振を奪った。

「低地では外野の定位置へのフライが、高地では飛距離が伸びるため本塁打になる。守備も、1球ごとのポジショニングや走者を進塁させまいという意識が低く、悪送球も多いので、打ち取った当たりがヒットになるし、単打の当たりが二塁打、三塁打になる。打たせてもアウトが取れないリスクがあるので、確実にアウトを奪うには三振を狙うしかない」

 本来の打たせて取るピッチングではなく、メキシコ仕様の三振を奪うスタイルも定着しつつあり、降板時にはスタンドの2561人のファンから温かい拍手が送られた。

 負ける訳にはいかなかった。チームは前節のレオネス・デ・ユカタン戦で3試合で計46失点。ベンチ裏では野手と捕手が口論になり、試合後には緊急ミーティングが行われるなど、重苦しい雰囲気に包まれていた。この日の試合を終え、チーム防御率は南北計16チーム中、最下位の8.09。一方、チーム打率は同3位の.318。元メジャーの主軸2人を含む3人のレギュラー陣を負傷で欠いており、打高投低と言われるメキシカンリーグの中でもさらに打高投低なチーム状況をなんとか改善したい思いがあった。

 給料未払い問題も、選手の士気を落としていた。チームでは、未払いだった選手への1度目の給料が1週間遅れで支払われたが、一部スタッフに対しては未だに3月支払い分が滞ったまま。今週初めに予定されていた選手への給料2度目の支払いも未だ行われておらず、チーム内では「給料支払われた?」が挨拶代わりの言葉になるなど、球団に対する不信感が日に日に高まっていただけに、元DeNAのギジェルモ・モスコーソ投手が先発した前日3日に続く連勝で、チームにようやく明るさが戻った。

 これで久保は通算成績は7試合2勝2敗、防御率4.50。投球回42イニング、49奪三振はともにリーグトップを保っており、奪三振は2位の投手に14個の差をつける独走ぶりだ。次回先発は10日に敵地で行われるサラペロス・デ・サルティージョ戦。ここ4試合、先発した試合で勝ち星から見放されているだけに、そろそろ白星が欲しいところだ。(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)

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