夢の舞台へ照準ピタリ アーチェリー 久原千夏

2020に懸ける長崎県勢 File.7

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「五輪に出て応援してくれる人たちに恩返ししたい」と語る久原=福井市

 2019年アーチェリー女子ナショナルAチームの選手はわずか4人。その1人に久原千夏は名を連ねる。現在はワールドカップ(コロンビア)に参戦中。3枠の世界選手権(6月・オランダ)代表入りを懸けて、ほかの3人と競っている。「夢に向かって一歩一歩前進している。自分ができることをちゃんと出し切って、また一歩成長したい」

■終われない
 佐々中時代は美術部だった。卒業後は就職するつもりで佐世保商高へ入った。部活を選ぶ時、佐々町の合唱団仲間の同級生に誘われてアーチェリー場へ。「かっこいいじゃん」。軽いノリで洋弓を握った。
 基本はすべて佐渡彰一監督から教わった。「いいところで適当。でも、しっかり教えてくれる」。信頼できる指導者の下で練習に励み、3年になる直前の全国選抜大会で7位入賞した。だが、高校最後の夏は県高総体で敗退。「これで終われない」。悔しさが強豪近大への進学を促した。
 当時、県スポーツ専門員として赴任していた早川漣(デンソーセールス)の存在も大きかった。3年の夏、12年ロンドン五輪団体で銅メダルを射止める姿をテレビで応援して、空港で凱旋(がいせん)を出迎えた。一緒に練習もした。「こんな感じになれたらいいな」。その憧れの先生と今、ナショナルAチームで肩を並べている。

■「感謝」形に
 近大では「2年生でガクッと落ちた」。楽しみだった14年長崎国体出場も「かすりもしなかった。心が折れた」。そこで支えになってくれたのが、00年シドニー五輪団体金メダリストの金清泰(キムチョンテ)コーチや同期の仲間たち。「おかげで腐らずに頑張れた」。その1人、杉本智美(ミキハウス)ともコロンビアで競っている。
 大学卒業後は地元へ戻ろうとも考えていた。だが「パッとしない成績だったころ」、18年国体開催へ向けて強化中だった福井県が、最初に声を掛けてくれた。「やるからには五輪を目指す」と約束して17年、福井信用金庫へ入った。
 定期的に近大で金コーチにフォームを見てもらっているが、普段のトレーニングは独り。実業団勢とは環境は違うものの「職場の手厚いサポート」のおかげで、毎日午後から約4時間半、練習に専念できている。そこで繰り返しているのは、体の軸のポイントを意識して、真っすぐ矢を放つという基本。「独りで考える時間が増えて発見も多くなった。教わったことを整理して、自分のことを分かるようになってきた」。試合中の対応力、勝負強さに磨きがかかり、18年全日本選手権で初優勝を飾った。
 これまで何度も悔しい思いをして、そのたびに強くなってきた。胸中にあるのは「長崎や福井、近大の仲間たちへの感謝」だ。それを形で表せるのは東京五輪。「出るだけではなく、メダルも目指せるような選手になりたい」。18歳の夏、応援する側だった夢舞台。今、しっかりと照準を合わせている。

 【略歴】くばら・ちなつ 佐世保商高でアーチェリーを始め、2年の全国高校選抜大会で7位入賞。近大へ進学後、3年の全日本学生室内個人選手権を制し、4年の全日本学生王座決定戦、岩手国体で優勝に貢献した。2017年に福井信用金庫へ入って、アジア選手権男女混合2位。18年全日本選手権で優勝。高校時代に日商簿記2級を取得。スイーツに癒やされる24歳。161センチ。佐々町出身。