ーお二人の仕事について教えてください。
大竹 「８・６・４」というジュエリー、アクセサリーのブランドで、クリエーティブディレクターをしています。
熊崎 自分の名前の「Tsuyumi」ブランドで、主に帽子のデザインから作成までを手掛けています。
ーそれぞれブランドを立ち上げた経緯は？
大竹 僕は昔から、スクラップレザーを買ってきては見よう見まねで小物やアクセサリー作りをしていました。カリフォルニアの大学を卒業した後は、日本で広告代理店に入社して、ＣＭ制作などに携わっていました。でも、やはり自分がデザインしたものを作りたいと思ってブランドを立ち上げました。ビジュアルの制作や撮影などを担当していた前職の経験を生かして、デザインと全体を考えるクリエーティブディレクターとしてやっています。
熊崎 私は日本で洋服のデザイナーを６年ほどやっていましたが、こちらでは自分のブランドを立ち上げるつもりはまったくありませんでした。ある日、気に入った帽子をフリーマーケットで見つけ、何となく気になって解体してみたら、「自分でも作れそうだな」と思って（笑）。そこから帽子のデザインを独自に研究して作るようになりました。最初は友達にプレゼントしていて、そのうちの一人がエージェントに見せて、さらに、その方が店のオーナーに見せ、そのオーナーが気に入って注文をしてくださったので、本格的に作り始めました。
ーブランドを立ち上げたといっても、経緯はかなり違うものですね。
大竹 僕はニューヨークだからできた、と思っています。ここの人たちは、質が良くて、気に入れば、その背景を気にせず買ってくれる。また、商品の一部を工場と一緒に作っていますが、長年ファッション業界で働いてきた方たちが、いろいろと教えてくれるのもニューヨークならではです。
熊崎 私も日本だったらできなかったと思います。洋服のデザイナーという前歴がありますが、帽子のデザインとなると全く違うものです。初めて展示会に出したとき、日本人のバイヤーさんが来て、どこで勉強したのか、何の雑誌に載っているのか聞いていきました。日本の場合、そういう背景をとても重要視します。こっちのバイヤーは、それまで帽子を作ったことがない人のものでも、気に入れば「I like your collection.」で終わりです。それでオーダーが入り続けて、14年やっていけているのはニューヨークならではかもしれません。
ーそれぞれ、ブランドに込める信念は？
熊崎 私はパターン引き、裁断を手で、ミシンで縫う作業まで、ほぼ一人でやっていますから、「自分の作りたいものを作る」が信念で、そうして作ったものを好きで身に着け続けてくれる人たちのために作るのがブランドの意義です。工場に委託したこともありましたが、納得できず結局解いてやり直しました。いろいろと試行錯誤をしながら、自分のこだわりや自分ができる範囲でやる、という方向性を見いだしましたね。
ー大竹 幅広い層をターゲットにしているので、常に新しいものを作っていくことが信念です。展示会やクラフトフェアなどで直接お客さんの要望も聞きますし、工場などでも新しい技術が出てきたらそれを試したりしますね。ブランドを大きくしたい思いもありますが、いろいろやっていく中で、デザイン性のあるものならば、ファッション以外のアイテムの製作にも挑戦していきたいと考えるようになりました。好きなことを続ければ方向性は自然に生まれると思います。
熊崎 私はむしろ変わらないように気を付けているんです。でも私もデビュー当時から比べるとデザインがよりミニマルになっています。それも好きなことを突き詰めた結果として変わってはいるんでしょうね。
熊崎つゆみ
岐阜県出身。文化服装学院在学中に第13回ルミネファッションデザイン賞で金賞受賞。卒業後は日本のアパレルメーカーで洋服のデザインを担当。2001年に来米。05年に自身のブランド「Tsuyumi」を立ち上げた。帽子を中心に、スカーフ、アパレルなども展開中。
tsuyumi.com
大竹達也
東京都出身。中学３年生の時にカナダに移り、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校へ留学。卒業後、日本で広告会社に就職。再来米。2015年から創業に関わった８・６・４デザインでクリエーティブディレクターを務めている。
864design.com
