『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』 「昭和な」夫婦が、猫の失踪をきっかけに向き合う

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(C)2019 西炯子・小学館/「お父さん、チビがいなくなりました」製作委員会

 タイトルのチビは、主人公が飼っている黒猫。でも、流行りの猫の映画ではない。原作は、『娚の一生』などで知られる西炯子の話題の漫画。それを倍賞千恵子×藤竜也の共演で映画化したホームドラマにして、夫婦のラブストーリーである。亭主関白で無口な夫と専業主婦の妻、50年連れ添ってきたいかにも昭和な夫婦が、チビの失踪をきっかけに初めてお互いの気持ちと向き合う話だ。

 昭和な夫婦といっても、「サザエさん」の波平とフネのようなツーカーの関係ではない。今の時代にそんな夫婦を推奨する映画を作ったら、炎上してしまうだろう。というより、そもそも説得力がない。本作の魅力は、「お父さんがいるから、(逆に)ひとりだって感じるの」と愚痴って離婚を切り出すものの、実は…という妻の本当の願いや、あるいは無口でぶっきらぼうな夫の本音を、直接的に描くのでもセリフで説明するのでもなく、例えば「毎日同じ弁当で飽きないんですか」「同じだからいいんだ」という会話など、何気ない日常だとか普段の行動から浮き彫りにしていくところにある。

 監督は、『毎日かあさん』『かぞくのひけつ』などホームドラマには定評のある小林聖太郎。見合い結婚をした夫婦のなれそめを若手キャストが演じる回想シーンが凝っていて、昭和感を際立てるのもうまい。ときにほっこりさせられ、ときにジーンと心に沁みる感動作だ。★★★★☆(外山真也)

監督:小林聖太郎

原作:西炯子

出演:倍賞千恵子、藤竜也

5月10日(金)から全国公開