『オーヴァーロード』 戦争、ホラー…いろんなジャンルがテンコ盛りの娯楽作

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 J・J・エイブラムスが立ち上げたバッド・ロボットの製作作品だ。舞台は1944年6月、ドイツ占領下にあるフランスの村。連合軍の通信を妨害している電波塔を破壊するためこの地に降り立った兵士たちの任務が描かれる。だから、始まりは戦争映画だ。

 同社にはモンスター映画の系譜があり、代表作は『クローバーフィールド』シリーズ。モンスター映画の王道の作りではなく、観客に主人公と同じ情報しか与えない、いわゆる“一人称”の語り口が特徴だ。実は本作もそのスタイルを踏襲している。戦争映画として始まりながら、任務遂行は副次的な物語に追いやられ、次第にナチスの人体実験をめぐるマッドサイエンティスト映画の様相を帯びてくる。その上、クライマックスは壮絶な格闘シーン。つまり、戦争あり、モンスター・ホラーあり、サバイバルあり、アクションあり…とジャンル映画のテンコ盛りなのだ。

 さらにいえば、本作にはユーモアもある。それは例えば、犬に追われて実験施設に迷い込むご都合主義の展開や、銃撃戦のど真ん中に子供が現れるなど状況の違和感が生むジワーッとくる笑い。言い換えれば、作り手の意図が見え見えの作品でもあるわけだが、我々を主人公に乗せて体験を共有させる一人称のスタイルが効いているから、説得力は最後まで維持される。スカッと痛快ではないけれど、これもまたハリウッドらしいエンターテインメントだ。★★★★☆(外山真也)

監督:ジュリアス・エイヴァリー

出演:ジョヴァン・アデポ、ワイアット・ラッセル、ピルー・アスベック

5月10日(金)から全国公開

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