令和の時代を切り拓くビジネスパーソンにお勧めの5冊

いよいよ平成が終わる。「先行きが見えない時代」といわれて久しい。さまざまな前提や仕組みが急速に変わっていくなか、令和はどんな時代になっていくのだろうか――。連休中に、この時代や日本社会についてじっくり考えてみるのもいいかもしれない。(サステナブル・ブランド ジャパン=橘 亜咲)

**ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実
――望月優大**

ここ数年、コンビニや飲食店で若い外国人労働者をよく見かけるようになった。日本は平成が始まった1990年前後から「『専門的・技術的分野の外国人』は積極的に受け入れるが、『いわゆる単純労働者』は受け入れない」という姿勢を表明してきた。しかし、現実は「いわゆる単純労働者」をより多く受け入れてきた。まちで見かける外国人労働者はどういう人たちなのか。日本が「いわゆる単純労働者を受け入れない」という建前をとるのはなぜなのか。なぜ技能実習生は失踪するのか。日本人が直視してこなかった、「日本の移民問題」を通して、日本社会に潜む問題に向き合う。

**シェアライフ 
――石山アンジュ**

新しい世代の目に映る、これからの日本社会像を読み解く一冊。日本社会にも浸透してきた「シェアリングエコノミー」。そのビジネスモデルにばかり注目しがちだが、本書は時代や日本社会がなぜ「シェア」を必要とし、これからも拡大していくのかという「シェア」の本質を解き明かしている。「シェア」が浸透する背景の一つに、「豊かさ」の定義が変わってきたことがある。著者は「お金の価値そのものが揺らぎ始めている今の時代において、『豊かな人』のロールモデルは、『内面的にも満足し、他社とのつながりをもって信頼を得ている人』」と話す。シェアが、働き方も子育ても教育も変えていく。そして、「シェア」という「共助」の仕組みが行き詰まる日本社会の課題の解決策となる――。著者は内閣官房シェアリングエコノミー伝道師にも選ばれた石山アンジュ氏。

**選ばれ続ける会社とは サステナビリティ時代の企業ブランディング
――細田 悦弘**

時代に選ばれ、次代にも輝き続ける企業であるために――。企業には今、ブランドを通してサステナビリティと経営を融合させ、競争優位性を生み出すことが求められている。本書は、CSRやCSV、サステナビリティ、ESGの基本的な概念から、それをどう自社で生かし、ブランディングにつなげていくのかを論理的に分かりやすく、読んだ人が第三者にすぐ伝えられる文章で説明する。著者は、サステナブル・ブランド ジャパンのコラム「CSRブランディング最前線」でおなじみの細田悦弘氏。SDGs時代を生きるすべてのビジネスパーソンにお薦めしたい。

**大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実
――中村和代 藤田さつき**

「社会のいまのありようを理解するには、『ごみ』を見るのが一番なのかもしれない」――。朝日新聞の記者が「SDGs」をテーマに取材した大量廃棄社会・日本。国内では、年間10億枚の新品の洋服が廃棄され、約646万トンのまだ食べられる食品が捨てられている。大量廃棄を生む業界の構造的課題とそれを変えようと新たなビジネスを探求する人たち。消費者が直視しなければならない、技能実習生やリサイクル不能な化学繊維、特殊なコンビニ会計や賞味期限ルールといった問題を教えてくれる。「メーカーも消費者も、もの作りもどれだけのコストがかかるのか考えてみてほしい。服の値段が安くなる陰で、誰かが泣いているんです」と技能実習生を雇う国内縫製工場の男性は訴える。

**セゾン 堤清二が見た未来
――鈴木哲也**

無印良品、ロフト、ファミリーマート、パルコ、西武百貨店、西友、吉野家。そうそうたる企業群をかつて傘下に収めた「セゾングループ」の生みの親、堤清二。約40年前、堤は「資本と人間との接点にビジネスが存在する流通業は、規模の拡大や利益一辺倒ではなく、人間の本質を理解した事業展開が重要になる」という「マージナル産業論」を説き、今でいう「コト消費」「まちづくり」「ライフスタイルを売る」ということに重点を置き事業を拡大させていった。社会が急速に変わり、前例のない困難や課題に自らの考えを持って柔軟に対応していかなければならない時代に、企業は消費者の望む豊かさをどう実現していけばいいのだろうか。著者は、堤の「新たな価値を生み出す発想力」「現状を否定してイノベーションを起こす柔軟性」という特有のエネルギーに未来の消費の行方を知るための大きなヒントがあるという。

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