<隠れた名盤> 清竜人『REIWA』 日本語の歌詞、上質な生演奏を大切にした逸品

清竜人『REIWA』

 レコード会社移籍後初のアルバム。天才肌で孤高のシンガーソングライターや、“一夫多妻制”のハチャメチャなアイドルグループ“清竜人25”、そして観客も演者として参加できるパンキッシュな“清竜人TOWN”など、常に話題を振りまいてきた彼だが、本作はこれまでで最もスタンダード感が強い。

 全12曲、昭和の『ザ・ベストテン』世代の音楽を聴いている気分になれる。それは、星勝、井上鑑、瀬尾一三、原田真二などその当時からヒット曲に多数関わってきたベテランが編曲を手がけた作品が多いからだろうか。特に、ミッキー吉野が手がけた2曲が印象的。『平成の男』は、楽し気なブラス演奏の中で不器用な愛を誓うのに対し、『馬鹿真面目』は「真面目に生きるのが 馬鹿馬鹿しいと 思えど変われない 貴方が好きよ」という言葉でムーディーに誘う女性が主人公で、互いに惹かれ合うような関係性が微笑ましい。他にも、婉曲的な日本語詞や上質な生演奏を大切にした楽曲が多く、“REIWA”だからこそ古き良きものを見つめるキッカケになりそうな逸品だ。

 意外と星野源の音楽が好きな人にハマる気もした。本作を聴けば、人とのつながり方をよりリアルなものに変えてみたくなるはず。

(キング・通常盤2778円+税)=臼井孝

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