Off time Vol.31 成功者の横顔 会社または商店など、トップで 活躍する人のオフタイムはどんな顔を 持っているのでしょう。オフタイムから 垣間見るトップの顔をご紹介します。

■今月の人■

企業組合 ねっこの輪 代表

白杉 滋朗 さん
1955年大阪生まれ、滋賀県在住。学生時代より共働事業所運動に影響を受け、様々な活動に携わる。大学を卒業後、高校講師、長距離トラックの運転手など様々な職に就きながら運動に関わり続け、1983年にねっこ共働作業所に入職。2005年に営業・パソコン部門を分離して「印刷工房ルーツ」を設立。2009年に掃除専門の「掃除屋プリ」を立ち上げ、3つの事業所を企業組合ねっこの輪として障害者の働く場づくりに力を注いでいる。 【滋賀県中小企業家同友会会員】
自然に触れるからこそ実感する「人だけが唯一働く」ことの意味を追い求め、障害者が社会参加できる環境を作りたい。

 子どもの頃から昆虫採集が大好きだった白杉さん。高校では生物部で活動し、生物の教師になるのが夢でした。一方で学生時代に障害者介護に関わり大きな影響を受けます。卒業後は様々な職に就きながらボランティアとして障害者福祉に携わり、1983年にねっこ共働作業所に入職。以来「働いてこその社会参加」をモットーに活動を展開。2009年には知り合いからの依頼をきっかけに掃除屋プリを立ち上げ、手がける大津市役所等のトイレが「きれいになった」と好評だそうです。

子どもの頃出会ったタマムシにいろいろな種類があるとわかり「全種類揃えたくなったのが最初のきっかけです」。採集した昆虫は標本にしている。周りに迷惑をかけ、嫌がられるぐらいやるのが趣味、がモットーで「自分が死んだらこの標本はどうなるのか」が目下の悩みだという。

 現在雇用している障害者は25人になりましたが、「まだ少ない」と白杉さんは言います。「一緒に働く機会がないと、障害者は役に立たないという優生思考がはびこるんです」。健常者が障害者と一緒に働く環境が絶対に必要、と7月に起こった相模原事件を受けて力説されていました。

 一方で長らく昆虫採集からは遠ざかっていましたが、仏文学者・奥本大三郎氏の著書『楽しい昆虫採集』を読んで復活。「本を買ったその日に読破して、次の日には用具を買いに行きました」。以来、昆虫を求めて全国へ飛び回っています。今年も沖縄の八重山諸島や九州、北海道を巡ってきた白杉さん。特に収集しているのがコガネムシ科の昆虫です。沖縄は島ごとに独自に進化した亜種が多いことから何度も訪れているといいます。「収集という意味では流行りのポケモンGOも同じかもしれないけど、自然環境や生育条件など科学的な分析があってはじめて出会えるという面白さは、昆虫採集でしか味わえないものですね」。

長さ10m竿の虫取り網で昆虫採集をする白杉さん。昔は2、3mの竿の値段が高くなかなか手が届かなかったが、今は釣り具店で5mの竿が数千円で手に入り「ありがたいですね」。

 自然を通して感じるのは「人だけが唯一働くことです」という白杉さん。「働いて得たものを平等に分配するからこそ、生産性0の人も生きていける環境ができたんです。そこをもっと大事にしないといけないですね」。趣味で磨かれた感覚が、こうして仕事にも活かされているようです。


企業組合 ねっこの輪
大津市石居1丁目10-13
TEL:077-546-2420
FAX:077-546-3661

取材:2016年9月

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