■今月の人■
企業組合 ねっこの輪 代表
白杉 滋朗 さん
自然に触れるからこそ実感する「人だけが唯一働く」ことの意味を追い求め、障害者が社会参加できる環境を作りたい。
子どもの頃から昆虫採集が大好きだった白杉さん。高校では生物部で活動し、生物の教師になるのが夢でした。一方で学生時代に障害者介護に関わり大きな影響を受けます。卒業後は様々な職に就きながらボランティアとして障害者福祉に携わり、1983年にねっこ共働作業所に入職。以来「働いてこその社会参加」をモットーに活動を展開。2009年には知り合いからの依頼をきっかけに掃除屋プリを立ち上げ、手がける大津市役所等のトイレが「きれいになった」と好評だそうです。
現在雇用している障害者は25人になりましたが、「まだ少ない」と白杉さんは言います。「一緒に働く機会がないと、障害者は役に立たないという優生思考がはびこるんです」。健常者が障害者と一緒に働く環境が絶対に必要、と7月に起こった相模原事件を受けて力説されていました。
一方で長らく昆虫採集からは遠ざかっていましたが、仏文学者・奥本大三郎氏の著書『楽しい昆虫採集』を読んで復活。「本を買ったその日に読破して、次の日には用具を買いに行きました」。以来、昆虫を求めて全国へ飛び回っています。今年も沖縄の八重山諸島や九州、北海道を巡ってきた白杉さん。特に収集しているのがコガネムシ科の昆虫です。沖縄は島ごとに独自に進化した亜種が多いことから何度も訪れているといいます。「収集という意味では流行りのポケモンGOも同じかもしれないけど、自然環境や生育条件など科学的な分析があってはじめて出会えるという面白さは、昆虫採集でしか味わえないものですね」。
自然を通して感じるのは「人だけが唯一働くことです」という白杉さん。「働いて得たものを平等に分配するからこそ、生産性0の人も生きていける環境ができたんです。そこをもっと大事にしないといけないですね」。趣味で磨かれた感覚が、こうして仕事にも活かされているようです。
企業組合 ねっこの輪
大津市石居1丁目10-13
TEL:077-546-2420
FAX:077-546-3661
取材:2016年9月