【MLB】「ボールは変わった?」 本塁打“乱発”のメジャーで投手たちが米紙に続々証言

ヤンキースのJA・ハップ(左)、レッドソックスのデビッド・プライス【写真:Getty Images】

公式球が変わったのではないかという“疑惑”に…ヤンキース左腕「数字が示してる」

 メジャーリーグの本塁打数が記録的なペースで生まれており、公式球が変わったのではないかという“疑惑”が浮上している。果たして、真実なのか……。米全国紙「USAトゥデー」では、「MLBの球は変わったのか? 本塁打が記録的なペースで打たれ、投手たちはただ真実が知りたい」とのタイトルで特集を掲載。メジャートップレベルの投手たちの証言をもとに“検証”している。

 記事では、今季明らかに本塁打が増えているというデータを紹介。3、4月では計1144本塁打、1試合平均2.62本のホームランが飛び出しており、昨年比12.2%増だという。2017年には過去最高のシーズン6105本塁打が記録されたが、今季はそれを大きく上回る約6500本ペースだと指摘。さらに、MLB公式サイトの解析システム「スタットキャスト」のデータをもとに“特大弾”の多さに言及し、ツインズ、マリナーズ、ブルワーズの3チームが、昨年ヤンキースが記録した267本を超えるペースでホームランを量産している一方、オリオールズは歴史的なペースで被弾を重ねているというデータも……。間違いなく、ホームランは増えているというのだ。

 では、ボールは飛ぶようになっているのか。「MLBは球の製造に変更はないと主張しているが、空気抵抗が減少したという調査結果が昨年発表され、その傾向は今年より明らかである」。同紙はこのように指摘。ヤンキースの左腕ハップは取材に対して「打者は打球を打ち上げれば、ほぼ毎回本塁打になる可能性があると思っている。今までは本塁打を打たれた時は分かったが、今はそうではない。打者が苛立って、下を向き、アウトになると思った時でも、本塁打になるんだ。言い訳をしているようだから、あまり話したくはないが、数字が示している」と明言している。

公式球が変わったなら言ってほしい? 「MLB側が認めてくれたら、受け入れやすくなる」

 そして、同じような考えを他の投手たちも持っているようだ。メジャーを代表する投手たちが続々と“証言”している。なかには、打者の反応から疑いをもっている投手もいるようだ。

 ヤンキースの救援左腕ザック・ブリットンは記事の中で「MLB側が認めてくれたら、受け入れやすくなるだろう。ファンを増やしたいのは分かる。娯楽産業だからね。投手として、適応しなければならない。ただ、『より点が入るように球を変更することに決めた』と言ってさえくれれば、誰にとってもより対応しやすくなるんだよ」と発言。ボールは変わっていてもいい。ただ、それなら言ってほしい、という考えだという。

 さらに、カブスの左腕ジョン・レスターもファンが特大のホームランを見たいのだから仕方ないと胸の内を明かし、レッドソックスの左腕デビッド・プライスは「打球が430、440フィート(約131~134メートル)飛んでいるのに、打者は本塁打ではないと思って全力疾走しているんだ」と同紙に明言。ダイヤモンドバックスの救援右腕アーチー・ブラッドリーは「ほとんどの選手は本塁打を打った時に分かるが、打者が本塁打を打ったと分からない打球が多い。だから疑わしいんだ」と話している。プライスやブラッドリーは、打者もこれまでとは違う感触を持っているはずだと指摘している。

 メジャーでは近年、「フライボール革命」が浸透。バッターが打球に角度をつけることが、ホームラン増加の一因になっているとも当然ながら考えられる。トレーニング方法の発達なども、パワー対パワーの勝負の中で特大のホームランを生み出す要因の1つになっているかもしれない。記事では、「もちろん、現代の本塁打量産には他の要因もある。打者は単打よりも本塁打を狙っていて、安打の16%が本塁打である。投手はフライボール革命に対抗するため、高めのボールを投げるが、失投すると本塁打になる」と分析。またブリットンは、直球よりも失投の多い変化球を投げる投手が増え、その結果としてホームランが増えているとも考えているという。

 ただ、メジャートップクラスの選手たちの思いは同じ。ブリットンは同紙に対して「僕たちが求めていることは、ただ嘘をつかないでほしいということなんだ」と繰り返している。ただ真実が知りたい――。これに尽きるようだ。当然、真相はまだわからないが、今後何らかの“原因究明”が行われる可能性はあるのだろうか。(Full-Count編集部)

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