「対策にも限界」 滋賀・大津の事故受け、悩む保育現場

保育園(イメージ)

 滋賀・大津の悲劇は、決して人ごとではない-。車2台が衝突した弾みで1台が保育園児の列に突っ込み、園児2人が死亡した事故。県内の保育現場にも不安が広がり、「安全運転が守られなければ、対策にも限界がある」と本音も漏れる。幼い子どもたちの安全と教育環境の確保をいかに両立するか。根本的な解決策は見いだせず、関係者は苦慮する。

 国道1号とJRの線路に挟まれた横浜市保土ケ谷区の昴(すばる)保育園。週2回の散歩は、最寄りの公園まで踏切や歩道橋を越えなければならない。交通量の多い立地で、付き添う職員は普段から細心の注意を払っている。

 「散歩中は神経をとがらせっ放し。園に戻ったら、どっと疲れています」。女性保育士が明かす。倒れてきた沿道の看板が、園児にぶつかりそうになったこともある。こうした危険な場所は職員全員で共有し、安全なコースを選んでいる。

 横浜市磯子区の市東滝頭保育園は今回の事故を受けて職員会議を開き、あらためて散歩中の心得を確認した。住宅地という土地柄、抜け道や死角もあり、日ごろから危険なコースは地図上に落とし込んでいる。女性園長は「できるだけリスクを負わないことが鉄則」と話す。

 今回の事故では、信号待ちの園児らが巻き込まれた。小田原市の市立早川保育園は、赤信号は交差点のなるべく内側で待つことを確認した。ただ、歩行者側が注意を徹底しても、悲劇は繰り返されている。「事故は起こりうると意識して、常に気を引き締めている」と渡邊千幸園長は言う。

 付き添いの保育士3人も負傷した。ある女性保育士は「きっと身をていして園児を守ろうとしたのでしょう。最後は大人が体を張るしかない」と打ち明けた。

 昴保育園を運営する社会福祉法人の畠山隆司理事長は、散歩の「自粛ムード」が広がらないか気掛かりだ。園庭はあるが、散歩は地域とのつながりや季節感に触れる機会。「幼児教育上、とても大切な活動。変わらず続けていく」と話す。

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