ドローン目隠し法案(1)米軍、権限なく空撮規制 法改正なら拒否権 基地の動向把握困難に

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本紙チャーターヘリから撮影した米軍ヘリ墜落現場。大川ダムから数十メートルしか離れていないことが分かった。法改正でドローンを使った同様の空撮は原則禁止になる=2013年8月5日、宜野座村のキャンプ・ハンセン内

 米兵が突然入ってきて、打ち合わせも突然終わった。「上官が認めないと言っている」

 数年前、米軍嘉手納基地内の広い会議室。打ち合わせの相手だった米兵約20人が次々に席を立つ。小型無人機ドローンを使った空撮や機体販売を手掛けるスカイシナプス(沖縄市)の代表取締役、長?貴之さん(41)はぼうぜんと見送った。

 嘉手納弾薬庫に隣接する民間地を空撮しようとしていた。本来、民間地上空でドローンを飛ばすのに米軍と協議する義務はない。ただ、無用のトラブルを避けるため、長?さんは基地周辺の空撮予定を沖縄防衛局に知らせている。この時は初めて、米軍から直接協議を求められた。

 弾薬庫にカメラを向けない、飛行2時間前までに最終連絡する−。細かい協議を2時間ほど重ね、調いかけたところで、ちゃぶ台をひっくり返された。

 飛行禁止の法的根拠はなく、説明もない。「弾薬庫はセキュリティーレベルが高いんだろう、と推測するだけ」と長?さん。もめ事を避けたい顧客の意向もあり、空撮は実現しなかった。

 ドローン規制法改正案が衆院を通過した。成立した後は、司令官の同意が基地上空飛行の必須条件になる。長?さんは顧客から依頼があれば申請するつもりだが、不安もある。「同意の基準がはっきりしないと困る。顧客に迷惑が掛かるのではないか」

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 平時でも、米軍はできるだけ他者の接近を拒もうとする。緊急時はなおさらだ。

 宜野座村に米軍ヘリが墜落した2013年8月5日。キャンプ・ハンセン内、村民の飲料水を供給する大川ダムの方角から煙が立ち上った。役場の上下水道課長だった山城次雄(つぐお)さん(64)はゲート前に駆け付けた。

 ダム管理者には通行許可証と鍵がある。日頃は自由に出入りできるが、この時は米兵が立ちふさがった。墜落現場がダムからわずか数十メートル、しかもダムより高い場所にあることを教えてくれたのはテレビのヘリ空撮映像だった。有害物質がダムに流れ落ちることを懸念し、その日のうちに取水を止めた。

 「ヘリがなければ状況は分からなかった」。山城さんは振り返る。米軍が現場立ち入りを認め、村側が安全を確認して取水を再開するまでにはそれから1年以上かかった。「内地と違って大きな川はなく、基地内の山でなければ水は取れない。とにかく村民の水に問題がなくて良かった」

 隣り合わせの基地内の動向を把握すること。それはスパイ活動でものぞき趣味でもない。住民の命や健康を守ることに直結する。(編集委員・阿部岳)

 基地周辺の飛行を禁止するドローン規制法の改正案の審議が参院で始まる。技術革新で誕生した空からの目をふさぎかねない法案の内容を、沖縄の経験に照らして点検する。

 ワンポイント解説 米軍や自衛隊の基地上空でドローンを飛ばすには、司令官の同意を文書で得て、原則48時間前までに警察署に通報することが義務化される。

ドローンで空撮する本紙写真部記者=4月、浦添市