防災情報はUD(ユニバーサルデザイン)フォントで! 見えにくい字体だと大切な情報が伝わりません

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色だけでなく字体も見やすく

令和時代になりました。同じ大きさの上の元号の文字、ぱっと見で見えやすいのはどちらでしょう?

以前、誰にも見えやすい色を選ぶということで、カラーユニバーサルデザインについてお伝えしましたよね。

■その防災情報、実は見えにくいかも!人の見え方は5通りも!
https://www.risktaisaku.com/articles/-/4427

■色弱と消防業務、ホントに関係ある??
https://www.risktaisaku.com/articles/-/4629

今週は、フォントをユニバーサルデザインフォント(以下UDフォント)にすることで、誰とっても見えやすくなるということについてお伝えします。みなさんの街のHPや避難情報は、誰にでも見えやすいUDフォントになっていますか?

こちらをご覧ください。東京都渋谷区のHPです。渋谷区はHPにUDフォントを採用しています。

写真を拡大 渋谷区HP(https://www.city.shibuya.tokyo.jp

みなさんのお住まいの場所のHPと比べてどうでしょう?

間違いやすい部分も判別しやすく

UDフォントとそうでないものは、ぱっと見たときの読み取りやすさが違うことがわかっています。いったい何が違うのでしょう?

写真を拡大 デジタルサイネージ災害コンテンツガイドライン(一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム、https://digital-signage.jp/wp-content/uploads/DSCsaigaicontentsver2.pdf

例えば、明朝体や教科書体などは筆文字に近くなっていて、横文字が細く、縦が太くなっています。そうすると細い文字は、光の加減でかすれてしまい、読みにくくなります。

写真を拡大 デジタルサイネージ災害コンテンツガイドライン(一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム、https://digital-signage.jp/wp-content/uploads/DSCsaigaicontentsver2.pdf

さらに、空間が少ないと、つぶれて見えにくくなりますよね。くっついている濁点は、視力が落ちてきたら見るのが大変そうです。数字も離れている部分をしっかり離したり、間違いやすい部分を判別しやすくすることが、見えやすさにつながっています。

読みにくい日本語を理解しやすく

こんな、工夫が散りばめられているUDフォント、これを使わないのは、高齢化社会の防災情報としてまずいくらいでは? と思えてきます。一瞬で情報を読み取り行動しなければならない災害時、ほんのワンタイミングでも読み遅れたり、誤読してしまったら、命に関わる場合も出てきてしまいます。でもUD文字は、まだ当たり前のものとして普及していません。

写真を拡大 株式会社モリサワ(https://www.morisawa.co.jp/fonts/udfont/data/1903UDcatalog_web.pdf

というのも、このUDフォント、世界的な流れがあったわけではなく、最近になって日本で研究が進められたものなのです。

なぜかというと、英語などは元々読みやすい言語なので、フォントの工夫という問題がそもそも起きにくかったと言われています。

それに比べて日本語の場合、「避難勧告」「避難指示」など、漢字ばかりで書かれても意味が頭に入りにくいですし、かといって漢字とカタカナ、ひらがなが混じっていても、様々な形を認識しなければいけないので、やはり読むのが遅れます。日本語というのは、もともとかなり認識するのが難しい言語なのです。さらに、一説によると、同じ文字情報でも、英字の方が日本語の半分の大きさで認識できると言われているとか。だからこそ、UDフォントの必要性があったのですね。

このUDフォントが最初に意識されたのは、2006年と言われています。高齢者が家電製品の取り扱いを読み誤ったケースがあったことから、家電メーカーが研究をし始めたのが最初だと言われています。まだ13年しか経っていないのですね!

ただ、最近のことゆえに、UDフォント規格というものが確立されているわけではなく、個々の企業や研究者の努力によって研究・開発が進められてきた分野なのです。そして研究により、高齢者だけではなく、弱視(ロービジョン)や読み書き障がい(ディスレクシア)がある方にも見えにくい文字があることがわかってきました。

写真を拡大 株式会社モリサワ(https://www.morisawa.co.jp/products/fonts/ud-public/

こうやって比べてみると、確かに一般的な教科書体は線の太さに強弱があることに気づきます。みんなが使う教科書は、みんなが読みやすいものであってほしいですよね。フォントによって勉強が進まないなんて残念すぎます。

写真を拡大 株式会社モリサワ(https://www.morisawa.co.jp/products/fonts/ud-public/study/

UD文字が学校で標準仕様として使ってもらえたらいいのにと思ったところ、学校教育にいち早く取り入れたのは奈良県の教育委員会でした。

奈良県UDフォント採用事例 モリサワ(出典:YouTube)

映像をみると弱視や読み書き障がいの子にとって読みやすい字は、すべての人にとって読みやすい字であることがわかります。

写真を拡大 奈良県生駒市HP(https://www.city.ikoma.lg.jp/cmsfiles/contents/0000016/16974/310326_02.pdf

学習効果があがるとなれば、民間は素早く対応されます。「ドラえもん はじめての論語」とか、「ベネッセの小学生講座」などで採用されているのを見ると、なるほど! 論語がすいすい頭に入りそうって思いました!

写真を拡大 https://www.morisawa.co.jp/fonts/udfont/data/1903UDcatalog_web.pdf

東京防災など自治体でも採用

では、気になる防災にUDフォントを取り入れているところはというと…

東京防災の文字は、UDフォントです♪

写真を拡大 引用 東京防災(https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/res/projects/defaultproject/page/001/006/390/01/01-01.pdf

自治体では渋谷区のほか、同じく東京都で品川区のデジタルブックでも採用されています。

写真を拡大 品川区HP(https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/pressrelease/pressrelease-2017/hpg000030953.html

UDフォントを採用するところは多言語対応も進んでいるように思っています。みなさんの自治体はどうでしょうか?

また災害時のUDフォントの活用については、デジタルサイネージ災害コンテンツガイドライン(一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム)に詳しく説明があります。

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津波情報など瞬時に理解しなければ命に関わる情報は、UDフォントの方がいいですよね! また災害情報はもちろん、普段のプレゼン資料もUDフォントを活用して、誰にでも読みやすい字体を広める人になっていただければ嬉しいです。

写真を拡大 https://digital-signage.jp/wp-content/uploads/DSCsaigaicontentsver2.pdf

先に紹介した子ども向け論語の例文にも「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知れば、以って師と為るべし」とありました。日本語を詳しく知ることで、新しい知見であるUDフォントと出会うと、すべての人に役立つ防災情報となることがわかりますよね!

災害情報は通常フォントでは、角ゴシックが見えやすい字体とされています。UDフォントを試してみたい方は、ゴシックと明朝については以下のサイトで無料でダウンロードできます。

https://www.morisawa.co.jp/products/fonts/bizplus/

もっと防災界にUDフォントをはやらせたいと思っています♪ 皆さんの協力お願いいたします!

(了)

 

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