「轢き逃げ」きょう公開 水谷豊監督、檀ふみインタビュー 人生が交錯するドラマ

「映画を通じて人を描くことに興味があった」と話す水谷監督(左)と檀ふみ=福岡市内

 人気ドラマ「相棒」シリーズなどで知られる俳優・水谷豊がメガホンを取った「轢き逃げ -最高の最悪な日-」が10日から全国公開。ある地方都市のひき逃げ事件を発端としたサスペンスだが、事件に関わった登場人物の人生が交錯する人間ドラマでもある。被害者の父・時山光央役を演じ脚本も手掛けた水谷監督と、光央の妻・千鶴子役を務めた檀ふみに作品への思いなどを聞いた。

 ひき逃げをテーマにした理由について、水谷監督は「2本目の監督作品。今回はプロデューサーらからサスペンスへの挑戦を勧められた。脚本を頼まれると、人間の深い部分を描くアイデアがどんどん湧いてきた」と話す。

 主人公にはオーディションで選んだ若手2人を起用。水谷監督はキャスティングの意図を「無名の人が映画で役を得る機会は少ない。演技に“色”の付いていない人が成長するチャンスをつくりたかった」と語る。

 「完成した作品を初めて観賞した時は、ほっとした」と言う水谷監督。「イメージを創り、それをスタッフに伝えて正しい方向に導く作業だった。目指していた所にようやくたどり着けた感じ」。檀は「無駄なシーンがなく、最低限のカットで迫力のある展開に仕上がっており、役者として生理的に気持ちが良かった」と話す。

 撮影中は監督自らが若手に対し、実演を交え演技指導。壇は「私には何もしてくれなかった…」と冗談交じりに話すが、水谷監督は「壇さんの演技が自分の想定を超えるものだったから」と苦笑い。

 娯楽作品に仕上げた一方で、水谷監督は「人間を描きたい」という思いを強く込めた。「想像もしなかった事に巻き込まれた時、人はどうなってしまうのか、何に救いを求めるのか。そうした状況に置かれた人間の姿を見て、何かを感じてほしい」

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