埼玉県警、いまだ独立庁舎なし

茨城から「まだですか」 長年の悲願も実現性は?

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埼玉県警本部が入る県庁第2庁舎=4月、さいたま市

 映画「翔んで埼玉」の大ヒットや、新1万円札の肖像画に決まった渋沢栄一の地元として注目される埼玉県。その治安を守る県警は、1万人超の警察官を抱えている。昨年の刑法犯認知件数は東京、大阪に次ぐ3番目で、警察官1人当たりの負担率は全国一高い。一方、同規模の警察本部では唯一独立庁舎を持たず、県庁舎の一角に入居している。フロアが手狭で複数の庁舎に部署が分散する上、警備の課題も。財政事情もあり、内部からは「独立庁舎は悲願だが、いつ実現することやら…」と悲哀の声が上がっている。(共同通信=沢田和樹)

 「昔は群馬県警本部が小さな建物で心のよりどころだったが、今は立派な庁舎ができた。最近は茨城県警の幹部に『埼玉はまだですか』なんて言われちゃって…」。埼玉県警幹部はこう嘆く。

 県警本部が入るのは、JR浦和駅から歩いて15分ほどの場所に位置する地上10階、地下2階建ての県庁第2庁舎だ。1955年に完成した本庁舎が手狭になり、74年に建設された。1~4階には県の観光課や教育局があり、主に5~9階に県警の各部署が入る。

 フロアに限りがあるため、刑事部の鑑識課や科学捜査研究所は約4キロ離れた大宮署に、生活安全部サイバー犯罪対策課などは約8キロの別施設に分かれている。同幹部は、捜査には複数部署の連携が欠かせないとして「分散するせいで、移動や拠点の確保に無駄な時間と経費がかかる」といら立ちを隠さない。県警では2001年度以降、治安情勢の変化や人口増加を背景に警察官が約3千人増員されており、一部の執務室の狭あい化も問題になっている。

 警備面の課題もある。第2庁舎には警察関係者以外も出入りする上、県警フロアにつながる階段は長らく自由に出入りできる構造だった。県警は昨年9月にようやく入庁カードによる電子錠を導入するなどセキュリティーを強化したが、本部の警備経験がある警察署幹部は「不特定多数が出入りする中で完璧な警備は不可能だ」と語る。

埼玉県警本部が入る県庁第2庁舎=4月、さいたま市

 県警によると、独立庁舎がないのは建設中の岡山県を除き、埼玉、山梨、長野、静岡、奈良、広島、大分の7県。11年の東日本大震災で被災した福島県警は昨年、約140億円をかけた免震構造の独立庁舎を開庁し、分散する部署をまとめた。「情報の集約や指揮の一元化、業務の効率化が図られ、迅速的確な対応が可能になった」とする。

 庁舎への埼玉県警内部の意見はさまざまで「そもそも独立庁舎を経験したことがないので、合同庁舎が不便なのかどうかさえ分からない」(総務部関係者)という声もあれば、「事件が起きれば捜査員は現場に集まる。独立庁舎かどうかは大して関係ない」(捜査1課関係者)との意見もある。警務課の担当者は「庁舎建設となれば相当なお金がかかる。そう簡単に検討できる話ではない」と慎重に言葉を選んだ。

 埼玉県議会は1996年、前年の阪神大震災を踏まえ「震災に耐え、効率的な警察活動を行うため」として独立庁舎建設の推進を求める決議を可決した。過去には複数の県警本部長が、県議会で「独立庁舎が望ましい」と述べている。上田清司知事も昨年の予算特別委員会で必要性を認めたが、「病院建設など物入りの時期が重なった」と財政事情に触れただけで、庁舎建設について具体的には語らなかった。

 第2庁舎は2011年、本庁舎と合わせ約36億円で耐震改修を終えたばかり。改修された庁舎を見て、在職中の独立庁舎建設をあきらめた関係者も多いという。実際、県警は「現庁舎を活用するという県の考え方にのっとっている」としており、悲願はしばらく実現しそうにない。

埼玉県警が入る県庁第2庁舎の外壁には、2011年までに耐震補強が施された=9日、さいたま市