自然の恩恵に感謝し、“今日のしあわせ”を繰り返すまち
「まるで、昔に帰ってきたみたいだ」来訪者たちは、沖島の町並みに子どものころを懐古します。
生き急ぐ日々…たまには少し立ち止まり、ただのんびりと心の休憩に沖島を訪ねてみてはいかがでしょう。
漁業を主とする自給自足の暮らし
滋賀県近江八幡市にある堀切港から連絡船「おきしま通船」で約10分。青々とした山、海のように塩害がないため、湖面ギリギリにせり立つ家々。沖島は、琵琶湖に浮かぶ4つの島(沖島・竹生島・多景島・沖の白石)の中で最大の島であり、日本で唯一の淡水湖に浮かぶ有人の島です。人口およそ300人弱、島民の90%以上が琵琶湖の漁業を生業としています。港には何艘もの漁業船が横付けされ、どこか懐かしい昭和の薫りただよう町並み。自動車やバイクは走っておらず、主な移動手段は三輪自転車。漁業のほか、ほとんどの家では畑で野菜を作り、対岸の土地で米を作って生活しています。
猫島として一躍有名に増える観光客 沖島の未来とは
沖島に降り立つとたくさんの猫たちに出迎えられます。昨年、「猫島」として全国放送のテレビや新聞で何度か取り上げられ、遠方からも観光客が訪れるようになりました。
「島民の祖先は平安時代末期の源氏の落武者たち。歴史深いこの沖島も、子どもの減少と高齢化に歯止めがかからない」と西福寺の住職・茶谷文雄さん。「沖島町離島振興推進協議会に入り、観光業で島の活性化を図る取り組みを始めたが、今後は島の恵みを独自で商品化する6次産業も必要だ」と話します。
漁協の女性たちが提供する郷土料理や土産品、クルーズ船や季節のイベントは観光客に好評ですが、島のカフェや宿、食事処はすべて事前予約制。いつでも利用できる休憩所や店舗の設置が急務です。手つかずの「生活のある島」は、島の存続と活性化に向け、新たな一歩を踏み出そうとしています。