IMSA、2022年の新規定“DPi 2.0”にマイルドハイブリッドを導入する計画を認める

 IMSAは2022年の導入を計画している“DPi 2.0”とよばれる新車両規定に、ハイブリッド技術を用いる計画があることを認めた。競技担当副会長のサイモン・ホジソンによると、この新規定は現在のLMP2シャシーをベースとするDPi規定を進化させたものになるという。

 シリーズの最高峰カテゴリーにハイブリッドシステムを搭載する計画は先週、ミド・オハイオで開かれた2回目のDPi運営委員会のミーティングで持ち上がった。ミーティングには9社のマニュファクチャラーとともに、既存のコンストラクターの代表者およびIMSAとWEC/ル・マン24時間を統括するACOフランス西部自動車クラブが出席した。

 ホジソンが主導する木曜日のミーティングでは“マイルドハイブリッド化”形式を既存のプラットフォームへ導入するとともに、プロトタイプマシンに対する各マニュファクチャラーに合わせてスタイリングされたデザインキューを増やす方法が検討されたという。

 ホジソンは、提案された方策により、第1世代となる現行規定では制限されていた各ブランドのオリジナリティをより高めることができ、マニュファクチャラーに“付加価値”を提供できるだろうと語った。

「DPiが考え出された時、DPiマシンとともにLMP2マシンもレースで戦わせる意図があったことは間違いない」とホジソン。

「そのため、DPiがベースとなるLMP2プラットフォームのエアロ効率からかけ離れたものにはなってほしくなかったし、あまりにも多くのスタイリングを許可したくなかった」

「だが、2019年シーズンからはDPiクラスが独自のクラスで展開されるようになった。ゆえに次の5年間のホモロゲーション期間に入るにあたって、物事を少々違うかたちで検討するチャンスがあると思っているんだ」

■ハイブリッドシステムの導入を検討も、四駆化は除外

 ミーティングの大きな焦点は、“厳密に制御された”単一電源による後輪駆動のマイルドハイブリッドシステムの統合と、それをどのように既存のシャシーとパッケージに実装するかということにあった。

 ホジソンによると、コンストラクターたちは車両重量の増加と、ハイブリッドシステムが生み出す可能性のあるパッケージング上の課題を考慮に入れながら、現在のマシンで何が達成可能かを検討するためのシミュレーション作業を完了させているという。

 パワートレインに組み込まれるとされる、48Vのハイブリッドシステムについても議論が行われたことが分かっており、ホジソンは低電圧と高電圧の両方のシステムが議題に上がっていると語った。

 その一方で、IMSAは四輪駆動システムを形成することになる、フロントアクスルへのハイブリッドシステム配置については、明確に新規定の骨子から除外している。

ダラーラP217をベースに開発されたキャデラックDPi-V.R

 WEC世界耐久選手権でトヨタが使用する数百万ドル(数億円)のハイブリッドシステムとは異なり、IMSAが提案するユニットのリースコストの目標価格は10万ドル(約1100万円)程度とみられている。

 ホジソンは、一部の関係者がハイブリッドシステムの採用に対して懸念を示しているとし、その内容はハイブリッドシステムを組み込むために現在のLMP2ベースのシャシーの全長を伸ばすことだと説明。しかし、これについて彼は、仮定の話に過ぎず「時期尚早」であると語った。

「今現在、我々にとっての最優先事項はパッケージングと、我々がやろうとしていることの概念が証明を得ることができるかどうかだ」

「我々は可能だと信じているがね。レッドフラッグは出ていないよ」

■DPi 2.0は改革ではなく、あくまでも現行規定からの“進化”に留まる

 また、ホジソンは、マイルドハイブリッドユニットの追加は、コスト面やチームによる対応および、運営のしやすさに重点が置かれており、必ずしもパフォーマンスの著しい向上を図るものではないと強調する。

「我々が行なったすべてのシミュレーション作業では、現在のパフォーマンスに合致するか、もしくはゆるやかなパフォーマンスの向上が見られた。私たちは改革をしたいのではなく、進化について話をしているのだ」

「我々のシリーズには現在、オレカ、リジェ、ダラーラ、ライリー/マルチマチックという4つのLMP2コンストラクターのモデルが揃い、それぞれがマニュファクチャラーと連携して成功を収めている」

「なぜ機能しているものを変える必要があるだろうか。(規則を作る側からすれば)誰も白紙の状態から始めたいとは思わない」

「我々はそのことを念頭に作業を進めている。すでに持っているものを大きく変えるのではなく、成長を助け育てようとしているのだ」

 先週のミーティングに参加した9社のマニュファクチャラーには、DPiクラスに参加していないフォードとレクサスの代表者とともに、フォルクスワーゲングループの少なくとも2社のマニュラクチャラーが含まれていることが分かっている。

 また、ACOのテクニカルディレクターを務めるティエリー・ブーベもこのミーティングに参加していたが、ホジソンは1月にデイトナで開催された第1回目の運営委員会でもACOの参加を除外する意図は当初からなかったと語った。

「彼が今回、WEC第7戦スパ6時間レースと同じ週末にオハイオで行われたミーティングに参加したのは、DPiがベースにするLMP2カーのホモロゲーションの権限をACOが持っているからだ」と述べている。

2017年に登場したDPiマシンは2018年シーズンまでLMP2カーと同じクラスを戦っていた
マツダチーム・ヨーストが走らせるマツダRT24-P

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