イクメンブームを過ぎ、現状は

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「家事や育児」に積極的に参画する男性が 今、確実に増えています

2010年の流行語大賞にノミネートされた「イクメン」は、子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性、または将来そのような人生を送ろうと考えている男性を指す言葉です。

そんなイクメンと呼ばれる人たちの話を聞くと、「男だから」にとらわれず育児や家事を楽しむということが、多様で豊かな自分らしい生き方につながっていることがわかります。

働きたい妻を応援 外へ出て人と接することで"主夫"の不安感を解消

編集部家事・育児に積極的で「イクメン」と呼ばれるお2人ですが、そうなるきっかけや実際に家庭に入ったときの気持ちとは。

ファザーリング・ジャパン滋賀 代表 八木 雅彦さん(42歳) 妻(40歳)、女の子(12歳)、女の子(10歳)、男の子(8歳)の5人家族 第3子の1歳半から5か月間育児休業を取得し、家事・育児に専念。休業中に出会ったファザーリング・ジャパンに共感し、職場復帰後、現在は消防署で救助隊長として働きながら、ファザーリング・ジャパン滋賀の代表として活動中。

八木:うちは3人目の子どもがひどい食物アレルギーを抱えていて頻繁な通院が必要でした。妻は介護福祉士の仕事を持っていて、「仕事に夢がある。1歳半で私は職場に復帰したいから今度はあなたが育休を引き継いでほしい」と言われたのです。妻が仕事にそんな情熱をもっていたことをこのときに初めて知りました。戸惑いながらも上司に相談すると、「子育てに専念しろ」と言ってもらえたのです。それからは私が育休を取得し、子どもを病院に連れて行きながら、家事・育児を担いました。育休中はすべてが新鮮で、子どもの症状が思ったより早く改善し、当初の予定より早く保育園に入れるようになったときは、残りの育休期間が名残惜しかったくらいです。

NPO法人ファザーリング・ジャパン関西 副理事長 和田 憲明さん(44歳) 妻(42歳)、女の子(12歳)、女の子(8歳)の4人家族 元テレビプロダクションのエンジニア。妻の妊娠、出産を機会に“主夫”へ転身。保育士資格取得、ファミリーサポートのコーディネーターを経て、ファザーリング・ジャパン関西で活動中。

和田:以前の私はテレビの仕事で残業が多く、地方に何週間も出張することがありました。妊娠時高血圧症候群で苦しんでいる妻を支えてあげられずに悩んでいたこともあり、無事に生まれたわが子を抱いた瞬間、「この子ともっと一緒にいたい。今の職場ではそれができない」と強く思ったのです。もともと、看護師だった妻も仕事を続けたいと思っていたので、自分が〝主夫”となることが最もうまく行く選択肢だと思ったのです。妻と相談後、仕事を辞め、“主夫”としての生活をスタートさせたのですが、乳幼児と2人きりの生活は想像以上に大変でした。社会に取り残されているような不安と焦燥感に駆られ、辛かったですね。そこで子どもを保育園に入れ、アルバイトを始めました。保育園の送迎で出会うママたちに応援の声をかけてもらったことは、本当に大きな救いになりました。

「NPO法人ファザーリング・ジャパン」の活動風景 料理教室や父子で楽しむイベント等の開催のほか、定期的な父親交流会も実施。子育てに積極的に関わる父親同士の交流は、わかり合える部分が多く、大きな励ましとなっています。
男性も家事や育児を楽しむ 変わる家庭内の意識

編集部近年は、子どもの学校行事に参加する父親が増えました。家庭内や周りの意識にも変化がみられるのでしょうか。

和田:以前、中学生になる妻の姪が家に来たとき、皿洗いをしていた私を見て「かわいそう」と言っていました。でもその後「家事・育児は誰がするか」というアンケートが学校であったとき、99%が「どちらかというと女性」に○をつけていたなか、彼女1人だけ「どちらでもいい」に○をつけたと聞きました。わが家の様子を少し見ただけで、意識が変わったようでした。

八木:うちの娘も普段から料理をする私を見てなのか、「結婚するなら、料理ができる人がいい」なんて言っています。父親が家事や育児をすることに子どもたちは何の抵抗もなく受け止めているようですね。

和田:イクメンは確実に増え、家庭の中でも意識改革が進んでいますが、「家事・育児は女性」、「男性は仕事」という根強い風潮が残っていて、理解が得られない職場もまだ多いようです。社会の意識改革の方が遅れていて、イクメンを支え切れていないのが現状です。

八木:だから、家事や育児に積極的な父親を応援し、笑っている父親を増やそうというファザーリング・ジャパンのような活動が必要だと思います。

和田:これからは、個人が多様な生き方を選べ、社会も多様な生き方を受け入れる余裕が必要なのだと思います。少し前には「イクメン」なんて言葉もありませんでしたし、それに男性が「主夫」といった選択肢が選べるなんて、ほとんど考えられなかったですよね。私たちの活動を通じて少しでも男性の選択肢の幅が広がれば、と思います。

NPO法人ファザーリング・ジャパン(東京文京区) 「父親であることを楽しもう!」と考える父親たちが集まり、情報交換を行いながら、父親の家事・育児への参加を推進するさまざまな父親講座を展開。イクメンの輪を広げながら、行政や地域団体と連携したイベントなども開催。
家事・育児のスキルは生きる力になる 会話と協力で家庭円満

編集部男性が家事や育児に積極的に参画することは、どんなメリットがあると思いますか。また、そのような生活をスムーズに送るためのコツとは。

八木:家事や育児は、やるべきことに優先順位をつけてこなしていきます。隙間時間を使って習い事や塾の送り迎えをしたり、工夫して生活費をやりくりしたり。それらは仕事でも、あらゆる面でも活かされます。わが家では夫婦で会話し、協力し合いながら家を回すので、すべていい方向に回っていますね。

和田:私も妻と家のことを話し合う会議を楽しんでいます。忙しくて、妻との会話が少ないなと感じたら、意識して会話をする時間を作ります。しんどいときはしんどいと言えばいいし、手が空いている方が進んで家事・育児をすればいい。夫婦間のいい関係が、子育ての最も大切な基盤である家庭を作っています。マニュアルなんてなくて、その家、その家のやり方を夫婦の話し合いで決めていけばよいのだと思います。


■情報誌「自悠時間」滋賀 2016年3月掲載