核廃絶機運 市民からも 長崎平和宣言 起草委が初会合

平和宣言の文案について協議した起草委員会=長崎市平野町、長崎原爆資料館

 長崎市は11日、8月9日の長崎原爆の日の平和祈念式典で田上富久市長が読み上げる平和宣言文の第1回起草委員会を市内で開き、田上市長は「主に世界の市民社会に向けた宣言文にしたい」と述べた。被爆75年で核拡散防止条約(NPT)発効50年となる来年に向け政府レベルだけではなく、市民レベルでも核廃絶への機運を高めたい考えだ。
 起草委は田上市長を委員長とし、被爆者や有識者ら15人でつくる。市は委員の意見を踏まえて6月8日に宣言文の素案を提示、7月末にも完成させる予定。
 初会合で、委員からは今も被爆の実相が広く共有されていないことや核軍縮の停滞を懸念する声が上がった。「長崎被災協・被爆二世の会・長崎」の佐藤直子会長(55)は「県外の学校で被爆者の体験を話し『初めて聞いた』と言われ驚いたことがある」と明かした。長崎原爆遺族会顧問で被爆者の下平作江さん(84)は「平和は人の痛みを分かる心を持つことが原点。事実を伝え、人の心を動かすのが役目だ」と訴えた。
 長崎大核兵器廃絶研究センター初代センター長の梅林宏道さん(81)は「(核保有国が)『核は有用だ』と平気で言う風潮を止めないといけない」と指摘、核軍備競争の再来に対する危機感や米ロの対話の必要性に関する言及を求めた。
 ほかに核兵器禁止条約や朝鮮半島の非核化の推進、憲法9条の堅持に加え、11月に予定されるローマ法王フランシスコの来崎を生かした訴えとなるよう求める意見も出た。

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