「正使船」の模型完成 対馬厳原に2020年開設 朝鮮通信使資料館で公開へ

「朝鮮通信使」の正使船模型を示す松原さん=対馬市厳原町、対州海運の事務所内

 朝鮮王朝が江戸時代の日本に派遣した外交使節「朝鮮通信使」の正使が乗った船の精巧な模型が完成した。NPO法人「朝鮮通信使縁地連絡協議会」理事長の松原一征さん(74)=長崎県対馬市厳原町=が、韓国の専門家に依頼して制作した。2020年度に対馬市が厳原に開設予定の「朝鮮通信使資料館」で公開される見通しだ。

 朝鮮通信使は、豊臣秀吉の朝鮮出兵で断絶した国交を回復しようと始まり、1607年から1811年まで計12回送られた。朝鮮側は国書を携えた正使、副使、従事官の「三使」の船と貨物船で船団を組み、釜山を出港。対馬などを経て大阪まで海路で渡り、陸路で江戸に向かった。日韓に残る関連資料333点は2017年、ユネスコの「世界の記憶(世界記憶遺産)」に登録された。

 「正使船」の模型は全長約170センチ、幅約60センチで、実物の約20分の1の大きさ。韓国で「金剛松」と呼ばれる高級木材を使用。正使の船を示す「正」の旗を再現し、居室の扉なども開閉できるように精巧に作り込まれている。

 韓国の国立海洋文化財研究所が昨年復元した朝鮮通信使船の建造にも携わった古代船舶専門家、金南秀(キムナムス)さん(52)=釜山市在住=に松原さんが模型の制作を依頼。金さんが約4カ月かけて作りあげた。費用は約400万円。

 模型は4月24日、釜山からの船便で厳原港に届き、松原さんが経営する海運会社内で公開された。見学した比田勝尚喜市長は「朝鮮通信使が命懸けで渡ってきたことが感じられる。資料館のメイン展示の一つとして披露したい」と話した。

 朝鮮通信使の「世界の記憶」登録にも尽力した松原さんは「朝鮮通信使は朝鮮海峡の荒波を越え、日本との平和友好の懸け橋となった。模型展示を通し、次代を担う子どもたちにも関心を持ってもらえたら」と話している。

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