政治装うヘイト、条例で規制を 川崎市で市民が抗議活動

プラカードを掲げ日本第一党の街宣に抗議する市民 =川崎駅東口

 休日の川崎駅前が再び怒声に包まれた。12日、差別・排外主義を掲げる極右政治団体「日本第一党」の街宣活動に対し、100人を超える市民が抗議に駆け付けた。4月の統一地方選で「選挙に名を借りたヘイトスピーチ」が批判を集め、候補者全員が落選した第一党。政治運動と称して活動を続ける執拗(しつよう)さに規制を求める声は一層高まった。

 「存在自体が地域住民の脅威。自らの言動に反省も謝罪もないまま活動を続けるなど許されない」。ヘイトに対抗するカウンターとして集まった市民は約50分間、第一党のスピーチを抗議の声でかき消していった。「彼らの主張が一切聞こえず、安心した」。様子を見に足を運んだ在日コリアンの女性は、胸をなで下ろした。

 川崎市議選で無所属候補の佐久間吾一氏を支援した第一党最高顧問の瀬戸弘幸氏は、川崎区池上町を在日コリアンが不法占拠していると誹謗(ひぼう)中傷。在日住民の退去を主張する「選挙ヘイト」を行った。「『政治』という公的な装いに信じ込む人はきっといる」。デマと「出て行け」という排斥のメッセージがまた垂れ流されるのではと気が気でなかった。

 第一党の街宣は4回目。瀬戸氏と相模原市議選で落選した中村和弘氏の呼び掛けで約20人が集まった。

 反対する市民の多さを心強く思った女性は一方で解せない。「人を傷つける活動がなぜ警察に守られるのか」。県警はトラブル回避を名目に毎回鉄柵を設置して街宣参加者を隔離しているが、ヘイト活動の場が確保されているようにも映る。

 差別的言動がヘイトスピーチ解消法で禁止されていないためだと知った女性は「差別が広がり、手遅れにならないうちに取り締まる条例を作ってほしい」。だからこそ行政に代わり盾となったカウンター市民の存在が尊く思えた。この日は抗議する市民の動画をインターネットで公開してきた谷地中忠彦氏の名前をプラカードで掲げて連呼。「現状では社会的な批判で活動しにくくさせるしかない」。市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」も、第一党が悪質で危険な差別扇動団体だと知らせるチラシを道行く人に配布した。

 千葉県から駆け付けた男性は「川崎では絶対ヘイトを野放しにしないという規範が根付いている」と市民意識の高まりに感心した。相模原市の男性も力を込めた。「差別主義者の居場所は確実に少なくなっている。被害を完全に防ぐため、あとは罰則付きの条例や法律で規制するだけだ」

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