東京五輪陸上の期待株

 9秒98。2017年9月、陸上男子100メートルで桐生祥秀選手が打ち立てた日本記録だ。それまで日本記録だった10秒00の壁は、突破されるまでに19年かかった▲それから1年8カ月後、サニブラウン・ハキーム選手が9秒99を出し、日本人2人目の9秒台をマークした。日本記録については「そのうち切れるんじゃないですか」と語る。その余裕ある表情が頼もしい▲陸上の男子短距離界には、注目選手が次々と現れている。100メートルタイムの日本歴代ベスト10の選手を見ると、6人のタイムは過去2年以内に記録されている。最近のレベルアップは著しい▲東京五輪へ向けて、ぐいぐいと力を伸ばす選手たちには目を見張る。日本陸連の強化策もさることながら、きっとライバルの存在がよい刺激となっているのだろう▲サニブラウン選手の快挙の報が届いた日、十八銀行女子陸上部の野上恵子選手が仙台国際ハーフマラソンで優勝した。県の記録を18年ぶりに更新する好タイム。東京五輪マラソン代表選考会の出場選手として、MHPSマラソン部の井上大仁選手らと共に、県民の大きな期待がかかる▲東京五輪の開幕まであと1年余り。陸上だけでなくあらゆる競技で、選手選考を巡ってさまざまなドラマが展開されるだろう。いよいよ目が離せなくなってきた。(泉)

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