魚捌きに欠かせない出刃包丁とは
釣り人であれば1本は持っておきたい出刃包丁。主に魚を捌く時に使用します。
出刃包丁は魚の首を落とし、三枚おろしにするために設計されており、刃の幅は厚く、刃元はかなり鈍感な刃となっています。
出刃包丁の歴史
出刃包丁について確認できる最も古い記録は江戸時代の『堺鑑』。
その中で、「その鍛冶、出歯の口もとなる故、人呼んで出歯包丁と云えり」と記述されており、これが普及や時間経過とともに「出刃」に変わっていったようです。
出刃包丁の各部
出刃包丁と一括りで呼んでいますが、刃の部分や持つ部分など各部にはちゃんと名前が付いており、それぞれに役割があります。ここではそんな出刃包丁の各部についてご紹介します。
▼切っ先
食材に切れ込みを入れたり、細かい作業をするときなどに使用します。魚のエラを切り取る時などにも使います。
▼そり
切っ先から刃中までのカーブを描いている部分。食材を切り開く時などに使用し、魚を3枚に下ろす時などにも使います。
▼刃中
刃の真ん中あたりの部分。食材を切断する時などに使用し、料理ではこの部分を使用することが最も多いです。
▼刃元
刃の根元部分。力を入れるときに使用し、魚の頭を落とす時や骨を切断する時などに使います。
▼あご
持つ部分から刃までの突き出している部分。あごの距離が短いと、作業時に手がまな板に当たるため、自分にあったあごの距離の包丁を選ぶようにしましょう。
▼峰
刃の反対側にあたる背の部分。魚のうろこを取る時などに使用します。
▼口金(つば)
刃と柄(ハンドル)をつなぐ接合部品。
▼柄(ハンドル)
刃を固定している部分であり、手で握る部分。手で握る部分だからこそ、握りやすく、力が入りやすいハンドルの包丁を選ぶようにしましょう。
▼柄尻
ハンドル(柄)柄の末端の部分。ちなみに、ハンドルの刃側の端は柄元と呼びます。
出刃包丁の選び方
一口に出刃包丁といっても、サイズや素材、刃によっても千差万別。選び方を間違えると、非常に扱いにくいものを買ってしまうかもしれません。そこでここでは、出刃包丁の選び方を解説してきます。
サイズ
出刃包丁のサイズは、基本的には扱う食材の大きさによって選びましょう。中型魚であれば刃渡り150mm前後、アジなどの小型がメインであれば刃渡り105mmのアジ切り包丁が良いでしょう。もし1本ということであれば刃渡り150mmのものがおすすめです。
本出刃
刃が分厚く、重くて頑丈なスタンダードな出刃包丁。頭を切り離したり、骨ごと叩き切ったりする時にも力が入りやすく、強さも抜群なので、大きな魚をさばく人にはおすすめです。
中出刃
中出刃とは、刃渡り135mm~165mm(地域によっては180mm)位の出刃のこと。汎用性が高く、一般的な家庭用におすすめなサイズです。
小出刃
小出刃とは、刃渡り120mmまでの出刃のこと。小ぶりの魚を捌いたり、うなぎやハモのような細長魚等を捌くのに適した出刃包丁です。
アジきり
小魚を捌いたり、下ごしらえをしたりするのにに大変重宝する出刃。小出刃よりも板厚が薄いため、身の薄い魚にも対応できるようになっています。
鋼とステンレス−素材の違い
出刃包丁には大きく分けて2種類の素材があります。ステンレスは鉄にクロムを添加したサビに強い合金。
鋼に比べて切れ味は鋼より劣りますが、サビに強く手入れがしやすいので一般家庭用に向いています。
一方、鋼は主に鉄に炭素を添加した合金。切れ味は鋭いですが、硬いため欠けやすく、そしてサビやすいため、こまめな手入れが必要になります。
片刃、両刃の違い
両刃(もろは)とは、包丁の両側に刃がついているもののこと。一般的な三徳包丁などを含めた洋包丁は両刃が使われています。
一方で片刃(かたは)とは、包丁の片側だけ刃がついているもののこと。出刃を含めた和包丁は片刃がほとんどです。
片刃には右利き用と左利き用があるため、購入の際は注意が必要です。
金額の違い
包丁の値段は質に比例します。もちろん高い包丁になるにつれて良い素材になり、切れ味もあがります。
しかし、高いものでは何十万円もするため、上をみるとキリがないので1万円くらいで探してみるのがおすすめです。
おすすめの出刃包丁
出刃包丁の基本的な知識をご紹介してきました。では、実際に購入する場合、無数の包丁の中からどれを選べばよいか迷ってしまう方も多いはず。そこで、おすすめの出刃包丁をメーカー別にご紹介します。
有次
京都に店を構え、日本でもっとも有名な包丁店である「有次(ありつぐ)」。
有次の特徴はその形。包丁の腹が大きく膨らんでいるため、心地よく魚を捌くことができます。
人気が非常に高いため、人気のサイズは売り切れになってしまうことも多々あるのです。
築地・正本
戦前から東京・築地に店を構える老舗の包丁屋。愛用者のほとんどがプロの料理人であり、その品質は折り紙つき。
素材にこだわりがあり、世界的に評価の高い、島根県の安来で生産されている”安来鋼”を使用しています。
藤次郎
包丁を知る人なら必ず知っているくらい有名な”藤次郎”。切れ味が良いのが特徴で、一般家庭から料理人にまで広く愛されています。
近年では、海外マーケットにも進出しているため、海外でも人気の高まりつつあるブランドです。
GLOBAL
ハンドルまでオールステンレスの包丁が印象的な”GLOBAL”。速水もこみちさんが愛用していたことから知名度も高いブランドです。
GLOBALの特徴は、刃柄一体型の設計により、デザイン性や衛生面でも優れていることです。
関孫六
国内シェア40%を誇る日本のトップ刃物メーカーである貝印の展開するブランド”関孫六”。
ホームセンターにも販売されていることから大衆向けなイメージですが、そんなことはありません。
初心者向けからプロ向けまでを幅広くカバーする国産ブランドです。
出刃包丁の使い方
出刃包丁を用意したら、次は正しい使い方を勉強しましょう。間違った持ち方で使用すると、うまく切れないばかりかけがの危険性もあるため、正しく使いましょう。
構え
包丁の構えで一番大切なことは、自然に包丁がまな板に対して直角になるように立つことです。ここでは包丁の正しい構えをご紹介します。
1.拳ひとつ分まな板から離れる。
2.まな板から45度右を向く。
3.足の幅を肩幅と同じくらいにして立つ。
これが基本の姿勢となります。この姿勢だと、自然と包丁をまっすぐにして構えることができるのです。
持ち方
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包丁には重心点があります。包丁の峰の下の方重心があるはずです。その重心点に人差し指を添えます。次に、中指で顎の下のくぼみを握り、そのまま小指までしっかりと柄を握り込みます。これが基本の持ち方になります。
切り方
切る食材を包丁と垂直になるように真横に真っ直ぐ置きます。そして、食材を抑える手は”猫の手”を意識しましょう。
全ての包丁使いの基本ですが、刃の向かう方向に不用意に指を置いてはいけません。
魚を捌く場合は、包丁を引いて切るのが基本と覚えておきましょう。
出刃包丁の研ぎ方
どれだけよく切れる包丁であっても、手入れを怠ると切れなくなったり、錆びたりとすぐに使い物にならなくなってしまいます。
鋼の包丁や高価な包丁ほどその差は顕著に現れます。ここでは出刃包丁の研ぎ方をご紹介します。
研ぐ準備
砥石の表面は定期的に“面直し砥石”で平らにし、常に凹凸のない状態にしておきましょう。
刃こぼれがある場合は荒砥石、仕上げには仕上げ砥石が必要ですが、日常の手入れであれば中砥石で十分。
台所などで包丁を研ぐ場合はぬれ雑巾などの上に砥石を置き、砥石が動かないように注意しましょう
吸水性の砥石の場合は、あらかじめ砥石を水に浸けて水分を含ませておきましょう。
その際、砥石の頭が水に被らないようにしておくと、そこから石の中の空気が抜けていくため、短時間で水を行き渡らせることができます。
研ぎ方
砥石に対して約45度の角度を保ち、峰を十円玉2枚分浮かせましょう。
包丁を研ぐときには、数回に分けて部分的に研ぎます。刃渡り15㎝程度の包丁であれば切っ先・そり・刃中・刃元と順番に研いでいきます。
片側が研ぎ終わったら裏返し、数回刃を引くように砥石に当てて、先ほど研いだ時にできたカエリ(バリ)を取りましょう。
そしてもう片側を先ほどと同じように研ぎ、裏返してカエリを取ります。
美味しい魚は包丁から
今回は出刃包丁についてご紹介しました。魚を捌く際、手入れの行き届いておらず、切れない包丁で捌くとせっかく釣った魚の身もボロボロになってしまいます。
美味しい魚を食べるために、包丁にもこだわってみてはいかがでしょうか?