【リアルはどこに ゲーム依存を考える】<4>教育現場 「解禁の流れ」に揺れる学校

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インターネットとの付き合い方を考えるため、学校が使っている教材や啓発資料

〈文部科学省が小中学校でスマートフォン禁止を見直し/持ち込み容認を検討〉

2月19日、こんなニュースが全国を駆け巡った。大阪府教育庁が持ち込み容認に転じたのを受け、文科相が表明したのだ。

「どうしてこれまでと逆のことを」。福岡県内の複数の中学校でスクールカウンセラーとして、多くの不登校の生徒に関わっている男性は戸惑う。

担当するある市立中学は、不登校傾向(年間20日以上の欠席)や不登校(30日以上)の生徒が全体の1割を占める。家庭訪問を繰り返しても、会えないことが多い。「ゲームなどのインターネット空間を居場所にして、引きこもる生徒が増えた」と感じている。

「四六時中スマホを持つことが可能になる。ネット依存になる生徒が増えるのではないか」

ほとんどの小中学校は、文科省が2009年に示した「原則禁止」の通知に従い、親からの申し出など特別な事情がない限り、禁止してきた。ただプライベートでは様相が異なる。内閣府によると小学生のスマホ、携帯電話の所有率は55・5%、中学生は66・7%(17年度)。

「時代の流れでしょうか」。この中学の校長は、持ち込み解禁へ雪崩を打つ教育界の現状を受け止める。

「ノーメディアチャレンジ」と称し、生徒が家でスマホやゲームに触れた時間を1週間分記入、提出させて自覚を促し、依存を防ぐ取り組みを5年前から展開してきた。だがノーメディアという状況が学校でも崩れてきている。

解禁になれば、緊急時以外かばんから出さない、登下校中も使わない、などのルール作りが必要になる。「生徒がちゃんと守ってくれるだろうか」。新たな課題が頭をもたげる。

学校の、メディアやゲームへの向き合い方が変わりつつある。スマホの持ち込み解禁とともに話題を呼んだのが、コンピューターゲームで腕を競う「eスポーツ」だ。昨年初めて高校生の全国大会があり、部活で採り入れる学校も出始めた。

福岡市立福翔高校(同市南区)では、コンピュータ部で昨年からゲームもできるようにした。「もっと全体見て」「ここは逃げよう」。放課後、声を掛け合いながらゲームを進める生徒たちの姿があった。

一人でのめり込まないよう、部で使うのは数人でチームを組む形式のゲームに限る。ゲームをするのは、“本業”である情報処理試験の勉強をした後の1時間。顧問は「日常生活がしっかり送れていることが条件」として遅刻や成績低下がないか常に気に掛ける。

〈eスポーツは教育ではない〉〈学校でゲームをさせていいのか〉。ちまたではそんな声も聞かれるが、谷本昇校長(59)は「運動が苦手な生徒や引っ込み思案な生徒も参加しやすく、大きな可能性を秘めている。eスポーツは新たな文化。これからも堂々と取り組む」と意に介さない。

部長の太田気績(きせき)さん(17)は入部前、夜遅くまでゲームして成績が落ちた時もあった。だが部活で時間を区切ってやると、家でもめりはりを付けられるようになったという。「今は勉強を頑張るための、良いモチベーションになってる」

依存を防ぐため、子ども向けの授業を各地で実践している和歌山大教職大学院の豊田充崇教授(47)=情報教育=は「先生が考えるより依存の問題は深刻だ。単なる『禁止』で対策した気になってはいけない」と指摘する。

情報社会に必要な知識や態度を育む「情報モラル教育」が、小中学校や高校の学習指導要領に明記されて久しい。だがどんな内容に何時間割くか、中身は学校任せだ。豊田さんはネット依存対策は「道徳の授業で最低でも年に2回」と提案するが、スマホいじめや出会い系被害の対策ばかりが優先され、後回しにされがちだ。教諭たちに「依存は家庭の問題」との意識が根強いことも一因という。

〈自まんのお兄ちゃんだったのに…〉。豊田さんが授業で使う自作の教材だ。サッカーがうまく、よく一緒に遊んでくれた兄が、スマホを手にしてから変わり始め、食事やお風呂を後回し。朝も起きられず、家族も不機嫌になり…。そんなストーリーを読ませ、弟の立場になって、スマホ使用のルールを班ごとに議論し提案してもらう。

「子どもが自分の問題として捉え、共に議論し、判断力を育てていくことが何より大切だ」

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=2019/05/14付 西日本新聞朝刊=