「人手不足」関連倒産(4月)

 厚生労働省が4月26日発表した3月の有効求人倍率は、前月と同水準の1.63倍で、依然として高水準を持続している。これを受けて中小企業を中心にした「人手不足」は深刻さを増し、低水準推移をたどる企業倒産だが、「人手不足」を要因とした倒産は2019年1月から4月までの累計が119件(前年同期比8.1%増、前年同期110件)に達し、過去最多を記録した2018年を上回るハイペースで推移している。

4月の人手不足倒産は26件、「従業員退職」型が5件発生

 2019年4月の「人手不足」関連倒産は26件(前年同月比13.3%減、前年同月30件)で、3カ月ぶりに前年同月を下回った。
 内訳は、代表者や幹部役員の死亡、病気入院、引退などによる「後継者難」型が15件(前年同月20件)、中核社員の独立や転職などの退職から事業継続に支障が生じた「従業員退職」型が5件(同2件)、人手確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」型が4件(同8件)、賃金等のコストアップから収益が悪化した「人件費高騰」型が2件(同ゼロ)だった。

人手不足関連倒産月次推移

産業別 サービス業他が最多

 産業別では、最多はサービス業他の11件(前年同月8件)。次いで、建設業4件(同4件)、卸売業3件(同8件)、製造業(同5件)と情報通信業(同1件)が各2件、農・林・漁・鉱業(同ゼロ)、小売業(同3件)、不動産業(同ゼロ)、運輸業(同1件)が各1件。

地区別 5地区で発生

 地区別では、全国9地区のうち、5地区で発生した。関東9件(前年同月13件)を筆頭に、中部(同4件)、近畿(同3件)、九州(同5件)が各5件、中国2件(同1件)だった。北海道(同2件)、東北(同1件)、北陸(同ゼロ)、四国(同ゼロ) は発生がなかった。都道府県別では、東京(同7件)と兵庫(同1件)が各4件で最多だった。

2019年1-4月の要因別、「求人難」型が2倍増

 2019年1-4月の「人手不足」関連倒産は119件(前年同期比8.1%増、前年同期110件)で、前年同期を上回った。
 内訳は、「後継者難」型が72件(同16.2%減、同86件)、「求人難」型が26件(同100.0%増、同13件)、「従業員退職」型が11件(同57.1%増、同7件)、「人件費高騰」型が10件(同150.0%増、同4件)だった。「後継者難」型が6割(構成比60.5%)を占める一方、「求人難」型の急増ぶりが際立った。

2019年1-4月、サービス業他が最多32件

 2019年1-4月の産業別では、サービス業他が32件(前年同期比6.6%増、前年同期30件)で最多だった。次いで、建設業22件(同22.2%増、同18件)、卸売業14件(同39.1%減、同23件)、製造業13件(同23.5%減、同17件)、運輸業(同100.0%増、同6件)と小売業(同33.3%増、同9件)が各12件で続く。
 2019年1-4月の地区別では、9地区のうち九州(13→24件)、近畿(13→18件)、北陸(ゼロ→1件)の3地区で前年同期を上回った。一方、減少は関東(45→44件)、東北(9→7件)、中部(14→13件)、四国(5→3件)、中国(6→5件)、北海道(5→4件)の6地区だった。

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