妊娠望み18年間、月60万出費…「何も残らなかったと思っていたけど…」

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 妊娠や出産に関する情報を提供し不妊を体験した人たちの交流の場をつくろうと、任意団体「おきなわ妊活・不妊サポート協会」がこのほど発足した。メンバーのうち3人は、治療経験者が仲間を支える「不妊ピア・カウンセラー」の認定者。定期的なおしゃべり会や個別カウンセリングの開催を通して「苦しんでいるのは、あなた一人じゃない」とメッセージを送る。(学芸部・新垣綾子)

 不妊ピア・カウンセラーは、東京都のNPO法人で不妊体験者の自助グループ「Fine」の認定資格。治療に関する医療・社会制度や心理学、カウンセリング技法などを学んだ人たちに与えられる。3月現在、全国に約130人おり、県内から取得した3人が協会の始動に関わった。

 協働代表を務めるのは、ピア・カウンセラーの中本みかさん(47)と宮城由香利さん(44)のほか、中本さんの友人で治療経験がある宮城由美子さん(47)。2月2日に7人のメンバーで設立し、これまでに「体外受精へのステップアップを迷っている」「体外受精にチャレンジ中」といったテーマで4回、おしゃべり会を開いた。会員を募り、勉強会やシンポジウムなどのイベントを開きながら活動を広げていく考えだ。

 由香利さんは2年前、東京都内であったFineのイベントに参加。子どもを授かったカップル、夫婦2人で生きる選択、男性不妊、治療の辞め時を迷っているケースなど多様な立場の体験談に接し「妊活や不妊を特別視せず、普通に話せる場が沖縄にもたくさんできたらいいと思った」と話す。

 不妊治療を手掛けるNaoko女性クリニック(浦添市)の高宮城直子院長(57)は「当事者にしか分からない深い悩みを安心して語れる場があることは重要。強い思いで立ち上げた活動が多くの人に届いてほしい」と期待する。

 活動内容や会員募集の問い合わせは、メールアドレスokinawa.ninnin@gmail.com

協会設立を呼び掛け 中本みかさん(47)

 おきなわ妊活・不妊サポート協会を中心になって立ち上げた浦添市の中本みかさん(47)は43歳まで18年、子どもを望み治療にチャレンジしたが授からなかった。「周りに相談者が少なく、うまくいかない苦しさを吐き出すことができなかった」。途方に暮れた体験が、活動の推進力になっている。

 23歳で夫の昌幸さん(57)と結婚。友人が産婦人科クリニックに勤めていた縁で、25歳の時に治療を始めた。同年代より結婚が早く、当初は「軽い気持ち」で受けていたが、何度挑んでも結果につながらない。流産は2度、経験した。

 体外受精の際は、採卵や胚移植のため1カ月に半分以上、通院が必要になることがあった。やがて「生活の全てを治療優先で」とフルタイムの仕事を辞めて収入が減った一方、治療費はかさんだ。当時は国の助成制度もなく、生命保険を解約したり住宅ローンの繰り上げ返済分を充てたりして工面。出費が60万円を超えた月もあった。

 「2人で楽しく生きていくのもいいんじゃない?」。40歳前後になり、常にそばで寄り添う昌幸さんにそう気遣われたが、簡単には諦められない。「今まで頑張ってきたことは何だったのと落ち込んだ。子どもも、貯金もないむなしさを他人には打ち明けられず、親戚の集まりでも肩身が狭かった」。シーンとした病院の待合室で「この気持ちを誰かと共有できたら、どんなに心強いだろう」と切実に思い描いた。

 NPO法人Fineの認定ピア・カウンセラーになったのは、治療を終えて3年がたった2018年2月。県内に他に2人の認定者がいると知り「何も残らなかったと思っていた自分の経験が、3人力を合わせることで生かせるのではないか」と一念発起。協会発足を呼び掛けた。

 活動メンバーは現在、みかさん、昌幸さん夫妻を含め7人。手探りの運営で財政的にも脆弱(ぜいじゃく)だが、おしゃべり会に訪れた参加者が「初対面でこんなに話せるとは思わなかった。来て良かった」と笑顔で帰っていった姿に決意を強くした。

 「みんな、こんな場を求めているんだ」