被爆体験者差し戻し審 今後の救済に“明かり” 「証人いない人にも道」

判決を受けて喜ぶ岩永代表(中央)と支援者ら=長崎市万才町、長崎地裁前

 「被爆体験者救済の大きなきっかけになる」-。長崎地裁が14日、上戸滿行さん=2011年に81歳で死去=を被爆者と認めた差し戻し審の判決を受け、被爆体験者訴訟の原告団や支援者らは喜びに沸き、今後の裁判に弾みがつくことを期待した。

 従来、被爆者健康手帳の交付には原則として物的証拠や2人以上の証人が必要とされてきたが、今回は原告の生前の証言を重視して被爆者と認める判断が示された。原告団の三宅敬英弁護士は「証人がいない人たちも救済の道が開かれる。こうした判決を手掛かりに、被爆体験者全員の救済に何とかつなげていけないかと思っている」と今後を見据えた。

 ただ、上戸さんが認められたのは「入市被爆」であり、国が定める地域の外にいた被爆体験者たちの訴訟は続いている。第1陣の原告団長で、第二次全国被爆体験者協議会の岩永千代子代表(83)は「勝訴の二文字に心が躍っている」と喜ぶ一方、「体験者も被爆者だという真実を訴え続ける」と決意を新たにした。

 被爆体験者の第2陣訴訟も最高裁に上告中だ。第2陣原告団長の山内武さん(76)は「地裁は良識ある判断をしてくれた。一つの“明かり”が見えた」と語り、「最高裁にもまっとうな判断を期待したい」と希望をつないだ。

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