ヴォルターズ、届かなかった1ゴール 執着心の差 大一番で露呈【歓喜と試練 2018~19熊本ヴォルターズ(上)】

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プレーオフ3位決定戦で島根に2連敗してB1昇格を逃し、試合後のセレモニーで悔しげに天を仰ぐ小林慎太郎(左)、古野拓巳(中央)の両主将=5日、県立総合体育館(池田祐介)

 バスケットボールBリーグは2018~19年シーズンが終了した。2部(B2)西地区の熊本ヴォルターズは、45勝15敗の過去最高の戦績で初の地区優勝を果たした。ただ、B2優勝と1部(B1)昇格を懸け、東、中両地区の1位などと対戦したプレーオフ(PO)は準決勝、3位決定戦とも惜敗。2年連続で悲願の昇格を逃した。地区優勝、そしてPO敗退それぞれの背景は何か-。指揮官の交代が発表され、変革期を迎えたチームの足取りを振り返る。(坂本尚志)

 4月29日、1勝1敗で迎えた群馬とのPO準決勝の第3戦。熊本のホームアリーナの県立総合体育館には約3800人の観衆が詰め掛けた。あと一つ勝てばB1昇格が決まる。だが、55-51の4点リードで迎えた最終クオーターに夢がついえた。気迫を全面にみなぎらせた群馬に主導権を奪われ、5分間近く得点できず、72-73で終了。ぼうぜんとした空気が会場全体に漂い、ベンチは深い喪失感に包まれた。

 「終盤でリバウンドとルーズボールが取れず、勝敗を分けた。何度も言って確認してきたことができなかった…」。つかみかけたB1への切符が手中からこぼれ落ち、古野拓巳主将の表情は青ざめていた。

 さらに昇格枠1を争った3位決定戦は島根に2連敗し、B2残留が決まった。昨季はB2全体で3位となり、入れ替え戦まで進んだもののB1富山に3点差で惜敗。今季は準決勝で群馬に1点届かず、「やるべきことを全員が共通認識として持てなかった。遂行力が足りない」。小林慎太郎主将は悔しさをかみ殺しながら敗因を振り返った。

 結局、POは準決勝と3位決定戦を合わせて1勝4敗。勝敗を分けたのは「ボールへの執着心」だった。負け試合はルーズボール、リバウンドといった球際の勝負で後手に回った。特に攻撃時のリバウンドで上回られ、多くの好機を与えて失点を重ねた。

 熊本は昨秋のシーズン開幕前、2季連続B2得点王のチェハーレス・タプスコットや突破力のある俊野佳彦ら4人を獲得し攻撃的布陣を整えた。1試合平均で得点は昨季より6・3増えて、リーグトップの87・3点をマーク。一方で失点がBリーグ3年間で最悪の79・5点を数え、試合運びに安定感を欠いた。

 誤算も続いた。開幕前に並里祐、菊池広明、チリジ・ネパウエが負傷。開幕直後に小林主将が膝に重傷を負って離脱し、終盤にはベテランの寺下太基、そしてリーグ最終節で再び並里が大けがをしてしまう。シーズンを通して万全の態勢はかなわなかった。それでも、レギュラーシーズンは終盤のヤマ場だった島根戦に連勝した勢いで西地区優勝を勝ち取った。

 ただ、「守備の意識が高く、流れを変えられるキーマンがいなくなってしまった」。強化担当の西井辰朗ゼネラルマネジャーが嘆いた通り、大事な歯車を欠いたまま大一番のPOに臨まざるを得なかった。

 「一発勝負に近いPOでは、球際での甘さを見逃してはもらえなかった。シビアさが足りなかった」。指揮官3季目の集大成として昇格を掲げた保田尭之ヘッドコーチは責任を取り、シーズン終了直後に退任した。

(2019年5月15日付 熊本日日新聞朝刊掲載)