「観戦」も立派なスポーツ

東京五輪とF1日本GPのチケット販売に思う

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昨年のイタリアGPでレッドブルが行った「パドッククラブ」の様子。チーム毎に販売するパドッククラブでは、所属ドライバーがあいさつにやってくるなどゲストは手厚くもてなされる(C)Getty Images/Red Bull Content Pool

 5月9日、2020年東京五輪で国内在住者向けに販売するチケットの抽選申し込みが始まった。最初の2日間は、申し込みが殺到して申し込み作業が数時間待ち状態となり、ニュースになったほどだ。また、開会式が30万円、閉会式が22万円、男子100メートル決勝などを含む陸上競技決勝が13万円、競泳決やバスケットボール男子決勝が10万8000円、体操決勝が7万2000円など、高額なチケットが多いことも話題になった。

 さて、「高額なチケット」で忘れてはいけないのがF1だ。5月19日に販売が始まる今年のF1日本グランプリを例に取ろう。大人(24歳以上)の一般席だと、グランドスタンドの「V席」の7万8700円が最も高く、9千円の西エリアが最も安い。しかし、F1はこれで終わらない。はるかに高額なチケットがあるのだ。

 それが「パドッククラブパス」。金曜日から3日間の通しチケットで一般的に購入できるタイプのパドッククラブパスは、日本円で1枚およそ60万円。これでも驚きだが、さらに高額のものもある。チームが独自に販売するパスだ。これは取引先など仕事上の関係がないと購入できない。チームごとにオリジナルのお土産などが加わっている。そして、パドッククラブへの入場は7歳以上であることや子供料金がないことなど、非常に特殊なチケットと言える。

 しかし、今年の日本グランプリでは、このパドッククラブパスを組み合わせた、とんでもないパッケージチケットが販売されている。「鈴鹿F1エクスクルーシブプラン」と名付けられた1組2人販売のチケットで、価格はなんと297万円。中身を見てみると、3日間通しのパドッククラブパスはもちろんのこと、専属のガイドが説明しながら案内するパドックツアーや予約が取れないことで有名な鈴鹿サーキットホテルでの宿泊とレストランでの専用ディナーなどといった豪華なサービスが並ぶ。有料オプションではあるが、移動にヘリコプターを使うこともできる。

 中でも目玉は、プロドライバーが運転するメルセデス・ベンツやアストンマーチンに同乗してレースが開催される鈴鹿サーキット国際レーシングコースをレーシングスピードで駆け抜ける「ピレリ・ホットラップ」。この同乗体験サービスは世界でも10カ所、しかもF1開催時しか行われていない。

 これは限定1組なので応募多数の場合は抽選販売のようだが、米プロフットボールNFLの頂点を決めるスーパーボウルのチケットが旅行会社経由だと1枚軽く100万円を超える価格で販売されていることを考えれば、このF1チケットは意外と現実的な値段なのかもしれない。

 これまで、F1のチケットは高すぎるとやゆされてきたが、今回の東京五輪を見るまでもなく人気がある競技のチケットは必然的に高額になる。事実、スポーツ競技を観戦することが再び注目されている影響で、プロ野球が過去最高のチケット売上を記録したほか、近年プロリーグを立ち上げた卓球やバスケットボールでも人気が高まった結果、チケットは高価になりつつある。

 スポーツは楽しい。そして、観戦も立派なスポーツの楽しみなのだ。(モータースポーツジャーナリスト・田口浩次)