「平成は天皇制が復活した時代だった」東浩紀は改元をどう見たか

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いよいよはじまった令和。改元で実感した国民のメンタリティや、今の日本社会における天皇の存在感について、思想家・東 浩紀さんと津田大介が語りました。

【5月13日(月)のオンエア:『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/月曜担当ニュースアドバイザー:津田大介)】
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■安倍政権は「改元を政治利用するやり方が見事だった」

平成が終わり、新しい時代が始まる――改元のあったゴールデンウィークは、まるでお正月のような盛り上がりを見せました。「5月1日に改元した安部政権は巧妙で頭がいい」と東さん。

津田:ゴールデンウィークに入る前に政治的にいろいろ紛糾していた問題があったけど、長期の休みを挟んで政権はリセットされましたよね。
:改元が4月1日だったらこうはいかないですよ。だって翌日から会社は新年度だから。また1月1日だったら正月と重なって「あけましておめでとう」も曖昧ですよね。だから改元は5月1日しかなかったんですよ。こんなに長い連休があって、もう一回正月がきたと。これって単なるゴールデンウィークなんだけど、日本人はなぜか「ありがたいことだ」となっていた。
津田:5月1日のメーデーも目立たなかったですよね。
:憲法記念日も目立たなかったしね。日経新聞だと安部政権の支持率は10パーセントくらい上がっているでしょ。
津田:改元に現政権が乗っかってますよね。

東さんは「改元を政治利用するやり方が見事だった」と話し、「改元が5月1日に決まったとき、この日にこんな意味があるってみんな論評してなかったと思う」と振り返ります。

:ゴールデンウィークと改元を重ねることで、日本人がこんなに沸き立つとは。だって福袋が出たり、「あけましておめでとう」ってツイートがあったり、「さようなら平成、ようこそ令和」みたいになっていて。今回思ったのは、日本社会にはびっくりするくらい前近代的なさまざまな制度やメンタリティが残っているということ。元号が変わるだけでこれだけ人々の気持ちが変わり、また政権の見方も変わった。それはある意味、怖いことだとも思いましたね。

東さんは「今回の大騒ぎにケチをつけることは一切ない」とした上で、こう語りました。

:普段見えていない日本社会の深層のマグマみたいなものがある。それは普通の合理的な思考では捉えられない。でも、安部政権はわかっていて。5月1日に改元すると人々はすごく喜んで、政権支持率も上がるし、天皇制に対する見方も好転すると直感的にわかっていたんですよ。そういうことがわからないと、日本の本質はつかめないんだなとあらためて感じましたよね。
津田:このプランを考えた人は誰かわからないけど、この国の構造がよく見えていて、そのプランを最大限に生かして支持率を上げたということですね。

■天皇の力は21世紀になって復活してきている

「平成は天皇制が復活した時代だった」振り返る東さん。その理由とは?

:昭和天皇が崩御したときは、元号が変わることに対して今回のような祝賀ムードは当然なかったし、天皇制そのものに対する批判もありました。特に昭和天皇は戦争責任などいろんな問題が議論されていた。ところが今回は、おそらく天皇制に対する疑義や不満がほとんどない状態で、完全な祝賀ムードで新しい天皇をお祝いした。これは平成の天皇が非常に努力された結果だと思います。

それは「ある観点からは評価できる」ものの、視点を変えると問題も感じると言います。

日本は、明治国家から天皇を国家の中に組み込んで痛い目に遭ったことで、天皇を盲目的に信じたことを国民が反省。戦後は天皇を「象徴天皇制」の中に閉じ込めながら国民主体の国を作ろうと歩んできたはずなのに、現在は戦前と似たようなところに戻っていると思うところがある、と続けます。

:これは「今、軍国主義が復活している」という話ではなくて、先ほど話したけど、普通の合理的な予測とか考え方ではなかなかたどり着けない日本社会にあるマグマみたいなものがあって、天皇はそのマグマみたいなものと結びついていて、天皇がお言葉を言うとか、元号が変わるとかってことに対して日本人の意識はすごく反応して、それで大きな政治などが動いている。でもこれは普通の民主主義の手続きとは全く違うところにある。第二次世界大戦で負けて、そういう部分が少なくなったと思っていたら、全くそうではなく、むしろ天皇の力は21世紀になって復活してきているんだなと。それに日本社会がどう向き合っていくのか。また令和の天皇が平成の天皇とはかなり違った天皇になりそうな予想もあるので、これから天皇制がどういう方向に向かっていくのかを見ていかなくてはいけないと思います。

■天皇の振るまいが社会に影響を与えることがある

今回のことで、天皇制や改元は日本の未来を語る上でひとつ重要な要素だと感じたそうです。

:改元によって、日本社会と国民の空気も変わる。この点を考慮しないで日本社会の未来を考えると意外と外すかもしれないと思うようになりました。
津田:なるほど。
:今こんな話をするべきではないけど、令和はいつまで続くのか、そういうことも含めて本当は自由に議論をしていく風土がないといけなくて、「天皇制については語らない」というふうにすると、日本社会の未来は予測を間違えると思いました。

最後に東さんは、今後の皇室についての議論のあり方について、こう話しました。

:それぞれの天皇に個性があって、“彼らの判断”があるわけですよね。たとえば、宮中祭祀をどれだけ大事にするか、どれだけ行幸を大事にするか、海外にどう目を向けるのかなども注目されています。そのかなで天皇ご自身の性格や意思の違いによる社会の動きを考えなくてはいけないと思います。天皇は単なる神輿ではない。天皇制について考える時はその神輿をどうつなぐかしか言わないんだけど、そういう話じゃなく、天皇も人間であり、その一人一人の人間の発言が官僚によって完全にコントロールされているわけでもなく、天皇の振るまいが社会に影響を与えることがあります。前皇后の美智子様のライフスタイルが同年代の女性に与えた影響はとても大きかった。それと同じように現皇后の雅子様がそういう役割を担うことができるのか。担うとすればそれは日本社会の女性の地位やあり方にどういう影響を与えるのか。そういう議論までいけて初めて皇室についての開かれた議論になるのかなと思います。

いよいよはじまった令和時代。天皇と国民のあり方はどう変化するのか、みつめていく必要がありそうです。

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