全国で起こりうる「液状化現象」。そのメカニズムと生活への影響に迫る!

UHB北海道文化放送で5月19日に放送のドキュメンタリー「傾き続ける我が家~がんばるべぇ さとづか~」(午後2:00、北海道ローカル)は、昨年9月に起きた北海道胆振東部地震により、液状化現象に見舞われた北海道札幌市清田区里塚地区の“その後”を追う。住民の生活を通し、全国どこでも起こりうる「液状化現象」の現実とメカニズム、それがもたらすコミュニティーへの影響を浮き彫りにする。

「もし地震が起きたら、自分の家の地盤が液状化するかも」と考えて生活する人が、どれだけいるだろうか? 2018年9月に死者43人を出した北海道胆振東部地震では、震源から遠く離れた札幌市清田区里塚地区を中心に、これが現実となった。あの日、全域停電した夜が明け、住民が目の当たりにしたのは、大切なわが家が傾き、道路が陥没、周囲が土砂に見舞われるなど、変わり果てた街の姿だった。

地震の1週間後に札幌市が開いた住民説明会は4時間にわたって紛糾した。

「液状化現象」は、1995年の阪神淡路大震災、11年の東日本大震災など、大地震のたびに発生。沿岸部で起きてきた印象だが、里塚地区は内陸部にあり、札幌冬季五輪時期の人口増加に合わせ造成された宅地だ。専門家は、この盛り土に使われた“土の種類”が液状化の一因になったと指摘する。ただ、この土地は札幌市が作成した「大規模盛り土マップ」にも記載されておらず、全国各地どこにでもある土地。造成した業者、許可した札幌市の責任を問う住民の声への答えは…。

また、被災地では、撮影に人が訪れるなど観光地化したことに加え、沈み続ける地面が住民を悩ませていた。冬から春にかけ、住民からは「体調にも異変が」という声も聞かれるように。経済的事情や高齢などを理由に、傾く家での生活を続ける住民もいるが、被害が大きかったエリアでは地震後2カ月で住民の約4割が引っ越した。

そんな中、治安を守ろうと自主パトロールをしてきた町内会では、「1日でも早く元の生活を」と願い、12月に恒例の餅つき大会を開催。里塚を離れた住民も駆けつけ、再会を誓った。

番組では、自宅が被災し、みなし仮設暮らしを続ける中川さん夫妻を取材。地震の2年前にリフォームしたばかりの家は、春を迎え、16cm傾きが出ていることが判明。ショックは隠せないが、故郷への思いは消えない。傾きを直す場合の見積もり金額を業者に依頼するも。

取材とナレーションを担当したのは、UHB入社1年目の新人アナウンサー・川上椋輔。東日本大震災を宮城県で体験した川上が、住民一人一人の心の移り変わりを聞き取り、表現に挑戦する。

【川上椋輔アナ コメント】

3.11の被災経験から「震災報道に携わりたい」という思いの中で迎えた社会人1年目。2018年9月6日、私は液状化で多くの家が傾いた里塚地区にいました。

札幌市の危険度調査で「危険」と判定された家。しかし、そこに住み続ける人々がいました。「我慢すれば住める」多くの人が口にしていた言葉です。しかしそう話していた多くの人が冬を前に町を離れました。取材に行くたび人通りが減っていることを実感する日々にもどかしさを感じました。

「被災地は2回被災する。1回目は発災した時。2回目は世間から忘れられた時」

これは3.11で被災した男性が私に話してくれた言葉です。

里塚の人々もテレビで「北海道は元気です」という言葉を見るたびに、里塚が忘れられているのではと口にしていました。こうした姿を前に「里塚から伝えていくべきことがある」と思い取材を続けてきました。里塚の今を通し、各地で起こりうる液状化について考える契機になれればと思います。

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