テレビニュータウン

 県内でも都市部近郊に大型団地が造られた高度経済成長期に、ニュータウンという言葉は夢や希望の象徴だった。この言葉を冠し、長崎の今を伝えようとしたテレビ番組があった▲1971~76年にNBC長崎放送が週1回放送していた「テレビニュータウン」。県内に民放が2局しかなかった時代の、ローカル情報番組の先駆けだった▲郷土芸能や伝統工芸の担い手の活動、町の商店主ら、市井の人々の営み、旬の話題が、番組で数多く紹介された。その中には若き日のさだまさしさんが結成したフォークデュオ、グレープもあった▲73年1月の初出演で反響を呼んだグレープは、その後レギュラーとして毎週、自作の曲を歌った。全国デビューが決まると、番組は「がんばれグレープ」特集を組んで後押しした▲73年1月のベトナム戦争停戦時には、県内に住むベトナム人を探し、出演してもらった。語られたのは親類縁者の消息や空爆で破壊された町、枯れ葉剤で汚染された山河への心配だった▲硬軟さまざまなテーマを通して時代や社会とつながる、本県ローカル情報番組の原点といえるだろう。その歩みを振り返る企画展が、あすまで長崎市のナガサキピースミュージアムで開かれている。ふるさとの姿を活写した草創期の作り手の情熱に触れることができる。(泉)

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