子ども料理教室始まる、伊勢原 食育や多世代交流も

庄司さん(中央)の指導でタケノコを切り、料理を作る子どもたち=伊勢原市内の創作和食料理店「天Sora」

 温かい食事と居場所を提供する伊勢原市内の子ども食堂でこの春、児童生徒を対象にした料理教室が始まった。企画したのは、子ども食堂を運営するNPO法人と地元料理店。将来を見据えて自炊できるすべを身に付けてもらうとともに、食育や幅広い年代との交流も視野に入れている。

 「みりんとお酒を入れると、お米につやが出るよ」。10連休中の先月29日。市内の料理店に、大人からの助言を受けながら調理に奮闘する子どもたちのにぎやかな声が響いていた。

 初回の料理教室に参加したのは、市内外の小学2年から中学2年までの10人。米のとぎ方や包丁の使い方などを学び、地場産の食材を使ったタケノコご飯や春野菜の酒蒸しなど4品をこしらえた。

 企画したのは、「いせはらみらいクルリンこども食堂」(同市伊勢原)を運営する市内の認定NPO法人「地域福祉を考える会」で、副理事長と事務局長を務めている中台和子さん(73)。

 同法人は2016年6月から、毎月第2火曜と第4木曜(ともに午後5時半~7時半)に子ども食堂を開設している。その切り盛りをする中で、利用する児童生徒が栄養の偏った食生活を送っていないか不安に思ったことがきっかけだったという。

 近くで開業する創作和食料理店「天Sora」オーナーの庄司歴人さん(45)に相談したところ、庄司さんが「調理を通して自立できるようになってほしい」と快諾。庄司さんの料理店を貸してもらい、開催にこぎ着けた。

 自分の手で食卓を彩った子どもたちは、いずれも満足げだ。

 市立中沢中学校1年の伊藤未夢さん(12)は「(野菜の)大きさをそろえて切ることが大変だった。休日に親に作ってあげられたらと思う」とほほえみ、妹の月愛(るな)さん(11)も「お母さんのお手伝いに生かしたい」と笑顔を見せた。

 子ども食堂では、ひとり親世帯や低所得世帯の子どもたちに、地域のボランティアが収穫した野菜などの食材を調理し、夕食を提供している。1人暮らしの高齢者や障害のある人が集まる場所でもあるだけに、料理教室でも交流を深めていく考えだ。庄司さんは「山や海の季節の食材を使うことで四季を感じてほしい」とも話す。

 中台さんは、1人で食事をする人が多くなってきたと感じている。「子どもたちが料理を通して協力し、異世代と話す回数も重ねてほしい」と期待し、「ひとり親や共働き世帯が増える中、地域の人が子どもに声を掛けて見守っていくことにつながれば」と話す。

 次回は6月2日に開催予定。小学4年生から高校生までが対象で、定員20人。また子ども食堂は、高校生までは100円、大人は300円で利用できる。

 問い合わせは、同法人電話0463(95)6665。

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