水戸の画廊「しえる」 発表の場10年半、20日幕

作家「貢献大きかった」

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10年半を振り返り思いを語る「ギャラリーしえる」オーナーの佐藤雅子さん=水戸市見川町

2008年10月の開設以来、10年半にわたり、地域で美術の創作活動をする人たちに発表の場を提供してきた水戸市見川町の画廊「ギャラリーしえる」が、20日で休廊する。これまで400件ほどの展覧会を開いてきた。オーナーの佐藤雅子さん(65)によると、運営を支えてくれた夫の体調不良により決断したという。画廊を利用した作家たちからは「創作の意欲を励ましてくれる得難い場所だった」と、灯が消えるのを残念がる声がやまない。

画廊は同市笠原町の県庁から西へ約1キロ、雑木林を切り開いた場所にある。広い駐車スペースの奥に平屋の建物。室内は真っ白な壁に、高い天井で、現代アート作品が映える空間だ。壁面の一部はガラス窓で、外光が入るようにしたのは佐藤さんの発想だ。

「静かで、落ち着けて。広さもちょうどいい。折々の作品発表には理想的」。19日まで、この画廊で最後となる個展を開いている画家は、空間や雰囲気の魅力を語る。利用は5回目だ。

佐藤さんは常陸太田市出身。建設会社を経営する夫と娘2人がいて、専業主婦だった。

画廊を開く転機は40代半ばだった。子育てが一段落し、水戸芸術館でボランティアをした。広報誌作りで美術家にインタビューした。経験を重ねるうちに「現代美術にはまった」。10年務めたところで一念発起し、自ら画廊の経営に乗り出した。

大きな利益は求めなかった。夫は裏方として無償で仕事を手伝ってくれた。

作家と触れ合う中でいつも感じるのは「自由な表現を求めるエネルギーの強さ」。創作活動で生活の糧を得られる人は一部だが「それでも命懸け。趣味ではない」という。「展示を見に来る人も、おのずと自分と向き合うことを強いられる。画廊とはそういう場だ」

同ギャラリーを度々訪れる水戸市のデザイン作家、加藤木洋一さん(69)は「ここで出会えた人もいる。文化への貢献は大きかった。身近からギャラリーの灯がまた一つ消えてなくなるのは寂しい」と話した。(佐川友一)