救済劇から9年たって

 9年前、東京勤務の頃に自分が書いた記事を読み返す。ハウステンボスは経営難で存続の危機に陥っている。再建はどうなる。旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS、東京)は佐世保市などに「支援は困難という判断をあらためて伝えた」と書いている▲一方で、支援に向けた検討を「続ける可能性も残っており、行方はなお流動的」とも書いた。はっきり、すっきりしない記事だと、われながら思う▲実際のところ、事の行方はまるで分からなかった。施設の修繕費は200億円とも300億円とも見込まれ、HISは二の足を踏んでいた▲この記事から半月後の2010年2月、HISは市や県などの全面協力を条件に、経営主体となることを決断した。当時のHIS会長、澤田秀雄氏は会見で「3年間努力してうまくいかなかったときには新しい人(経営者)を見つけてもらえますか」と言って引き受けたと明かしている▲結果はご存じの通り、奇跡的なV字回復だった。あわや閉園という瀬戸際に立たされたのは昔語りだろうかと、ここ何年か思ってきた▲ハウステンボス社長として経営を立て直した澤田氏は21日に退任予定で、後任に最高人事責任者の坂口克彦氏が就く。のるかそるかの救済劇も昔語りになるだろうか。本県「観光史」のページが1枚繰られる。(徹)

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