SB松田「ギンギラギンに~」…勝負曲に隠れたそれぞれのドラマ

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サポーターの応援歌に後押しされスタジアムに入る中田監督(左)=京都市右京区・西京極陸上競技場

 試合前にヘッドホンを耳に当てるアスリートを、よく目にするようになった。本番で力を発揮するために音楽は今や欠かせない。京滋出身のプロ選手やトップ選手にも「勝負曲」はあるはず。調べていくと、隠れたドラマが待っていた。

 プロ野球はバッターが打席に入る時、投手ならマウンドに上がる際、選手指定の登場曲が球場に流れる。阪神の糸井嘉男選手(宮津高-近畿大出)はSMAPの「SHAKE」、ソフトバンクの松田宣浩選手(草津市出身)は自身の愛称「マッチ」にちなんで近藤真彦の「ギンギラギンにさりげなく」といった具合だ。

 各球団はホームページで登場曲のリストを掲載している。流行の歌や有名アーティストの曲が並ぶ中で、西武から巨人に今季移籍した炭谷銀仁朗捕手(31)の選曲は、異彩を放つ。「負けてたまるか」。平安高(現龍谷大平安高)野球部の先輩でシンガー・ソングライターの佐々木清次さん(55)=京都市山科区=の曲だ。

 佐々木さんの電話が鳴ったのは2015年のオフシーズン。炭谷選手から「勝負の年になる。清次さんの『負けてたまるか』を使っていいですか」。平安高ナインを激励する時にいつも歌っていた曲で、規定の23秒に編集した。今季はアップテンポの「ザクセル」。佐々木さんは「フランス語でゼロからのスタート、という意味。気持ちを奮い立たせてくれたらうれしい」とエールを送る。

 世界ボクシング評議会(WBC)ライトフライ級王者の拳四朗選手(27)=城陽市出身=の入場曲は、アニメ「北斗の拳」のテーマ曲「愛を取りもどせ‼」。デビュー戦は別の曲だったが「主人公の名前が同じケンシロウ」と2戦目から変更した。この縁で、歌っているクリスタルキングのボーカルが応援に来てくれるように。歌い出しの「youはshock」が流れると「スイッチが入ります」。

 2020年東京五輪を目指す選手たちも音楽にこだわる。若者に人気の自転車BMXフリースタイル・パークの中村輪夢選手(17)=右京区=は、伏見区出身のラッパーANARCHY(アナーキー)の「RIGHT(ライト) HERE(ヒア)」がお気に入り。イヤホンで聞きながら練習する。アクロバティックな回転技もある競技だけに「怖い技に挑戦する時に、音楽は気を紛らわせる効果もある」。

 ライフル射撃の綾戸真美選手(26)=滋賀ダイハツ=は、大阪出身の3人組ユニット、ベリーグッドマンの「Hello」を試合前に聞く。「射撃の場合は静かな曲と思われるが、私は違う。メンタルが影響する競技なので自信をつけて強い気持ちで臨むため」と意外な答えが返ってきた。

 チーム競技の場合はどうだろう。J2京都サンガFCの今季開幕戦が行われた2月24日、ハーフタイム中に西京極陸上競技場(右京区)で流れたのは、男性2人組ユニットC&Kの「ドラマ」。選んだのは今季から就任した中田一三(いちぞう)監督(46)。「捻(ひね)り出した作戦が明日の景色を変えて行く」という歌詞に、悲願のJ1昇格に挑むチームの思いを託した。「音楽の力も借りて、ポジティブな雰囲気をスタジアムでつくりたかった」とサポーターとの一体感も重視した。

 試合会場に向かうバスの中ではイヤホンをつけて音楽を聞く選手が多い。中田監督は自身のツイッターでこんなサポーターの願いをリツイート(拡散)した。

 「バスから降りる際に選手たちはイヤホンやヘッドホンを外してほしい。なぜなら、バス前に集まったサポーターの声やチャント(応援歌)を1分でも良いから聴いてほしい!」。支えてくれる人たちの生声ほど、奮い立たせてくれるものはないのかもしれない。