天草エアライン、機長不足で窮地に 3割欠航続く 人員確保見通せず

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機長不足で約3割の便が欠航している天草エアラインの「みぞか号」。4月26日にはエンジントラブルが発生し、5月4日まで全便欠航が続いた=天草市の天草空港

 熊本県などが出資する天草エアライン(天草市)が2月以降、機長不足のため、1日10便のうち約3割の便で欠航が続いている。直接の原因は3人の機長のうち1人が病気療養中のためだが、世界的なパイロット不足のあおりを受け、新たな機長確保はままならず、通常ダイヤに戻る見通しは立っていない。

 「利用者に大きな迷惑を掛ける」。10連休を翌日からに控えた4月26日、天草エアの吉村孝司社長は天草市で会見し、約3割の欠航が来年3月まで続く可能性に言及。深々と頭を下げた。同社によると、2020年3月期決算の純損益は数千万円の赤字の見込み。赤字転落は11年ぶりとなる。

根本的問題

 天草エアは50代の男性機長が2月下旬から病気療養のため乗務できなくなり、計画運休を実施。機長1人が運航できるのは1日8便、1カ月100時間の飛行時間などの上限があり、熊本、福岡、大阪の3路線のうち、飛行時間が長い大阪便を多めに欠航するなどして現体制で運航可能なダイヤに見直した。

 こうした事態に対し、国土交通省は「航空会社として機長が足りないのは異例の状況だ」(同省幹部)として、通常ダイヤへの早期回復を同社に要請。同省は1日10便の運航には予備人員を含め4人の機長が望ましいとしており、天草エアについては「人員が足りていない根本的な問題がある」と指摘する。

運航に支障

 天草エアもこれまで4人目の機長を探してきたが、見つからないまま機長不足で運航に支障が出た。県交通政策課は「格安航空会社(LCC)が増え、世界的にパイロット不足が深刻化している。小さな会社が新たな機長を探すのは難しくなっている」と頭を抱える。

 大手航空会社と給与水準の開きは大きく、蒲島郁夫知事は「パイロットの処遇改善も重要だ」との認識を示す。

 副操縦士の機長昇格に必要な国家資格は飛行時間1500時間以上などの厳しい要件があり、「昇格するまでには4~5年かかる」(天草エア)。機長経験者を採用できても、機体の種類ごとに免許が異なり、すぐに機長としての乗務はできないという。

“命の翼”

 天草エアは、島内の慢性的な医師不足を解消するため、天草市に1カ月に延べ40~50人の医師を運び、“命の翼”とも呼ばれる。市病院事業部によると、天草エアが使えない場合、医師らは九州新幹線で出水駅(鹿児島県出水市)からフェリーを経由して天草入りするという。同部は「現状では医師の到着に問題は生じていない。しかし新たな派遣を要請するときに、天草エアのダイヤが不安定なら交渉が難航する可能性がある」と不安を抱える。

 大型連休中には空路で天草入りできなかった観光客のキャンセルもあったという。天草宝島観光協会の赤木聖一事務局長は「天草エアラインが利用できるかどうかは、天草での滞在時間に直結する。早く通常ダイヤに戻ってほしい」と訴えた。(野方信助、赤池一光、嶋田昇平)

(2019年5月20日付 熊本日日新聞朝刊掲載)