30年後、「天然の肉」が手に入りにくくなる? 食料問題の解決のカギとなる「培養肉」とは

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J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「ZOJIRUSHI MORNING INSIGHT」。5月7日(火)のオンエアでは、東京大学生産技術研究所の竹内昌治さんを迎え、世界の人口増加に伴う食料問題の解決のカギとなりえる、人工肉など細胞を使ったものづくりについて訊きました。

■世界初! 本来の食感をもつ培養ステーキ肉を開発

竹内さんは東京大学で、生命科学の分野である細胞、タンパク質でものづくりをする研究をしています。肉本来の食感を持つ培養ステーキ肉の実用化への一歩を踏み出し、サイコロステーキ状の牛の筋肉組織の作成に世界ではじめて成功しました。

別所:培養肉ってどんな研究なんですか?
竹内:培養肉自体の研究は20年から30年くらいの歴史があります。最近になって欧米でスタートアップ企業がでてくるようなマーケットになってきています。通常、我々が食べている肉は、牛を殺してその一部を切り取ったものです。培養肉の考え方は牛を殺さずに、牛のある組織を一部取ってきて、それをバラバラにして細胞にします。細胞をたくさん培養することで出てきた細胞を、肉のように形状を整えて食べる。それが培養肉の考え方です。
別所:培養液とかで栄養を与えるんですか?
竹内:培養液に細胞をいれて培養すると、細胞1個が2個、2個が4個と増えていくんです。増えていった細胞をある程度の状態で筋肉に変えていきます。

培養肉と遺伝子組み換えは混同されがちですが、食料用の細胞には遺伝子組み換えはしません。細胞の本来の増殖機能を、培養液で高め増やすのが、培養肉の技術だそうです。

■30年後、天然の肉は手に入らなくなる?

培養ステーキ肉の研究が盛んになった背景には、世界の人口増加や食生活の変化などがあります。今、肉はスーパーで買うことができますが、人口が増加しており、30年後には手に入らなくなっているかもしれません。

竹内:人口が増えたら家畜を増やせばいいという話もありますが、土地や水が必要だし、家畜からでてくる温室効果ガスなど環境負荷につながる問題もあります。そう考えたときに、天然の肉はなくならないですけど、手に入りにくくなるかもしれない。そのときの選択肢として、培養肉という考え方があると思います。

近年、欧米で培養肉のスタートアップが次々登場していますが、そのほとんどがハンバーグ状のミンチ肉。しかし竹内さんは、肉本来のおいしさや食感を再現するために培養ステーキ肉を開発しました。違いは、筋がしっかり通っていること。

でも実は竹内さんも、培養ステーキ肉をまだ食べたことがないのだとか。

竹内:規制の問題がありまして、僕らの培養液は試薬なんです。これは医薬品に該当して、食品のカテゴリーではない。今後は規制を変えるよりも、僕らが規制にあわせて培養技術を確立することが実用化には早いのではないかと思います。
別所:今後の課題はなんですか?
竹内:大きな肉を作ろうと思ったとき、また食感を実現しようとしたときに、脂肪をどのように入れるか、血管をどう入れるか、あと中まで養分を供給した状態で長期間培養する技術が必要です。

この技術は理論上は、豚肉、鶏肉、魚でも可能とのこと。竹内さんは「生体を使ったものづくりということで言うと、今後人の細胞で臓器を作る再生医療や、犬の細胞で犬の鼻の能力をもった高感度なセンサー、昆虫の触覚細胞を使ったセンサーなど、今までにない人工物を生み出すかもしれない」と予測していました。そんな「バイオ・ハイブリッド」という技術が、今後の世の中を変えるかもしれません。

【番組情報】
番組名:『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』
放送日時:月・火・水・木曜 6時−9時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/tmr

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