大涌谷周辺「変化なし」 東海大教授が緊急調査

箱根山・大涌谷周辺の噴気地帯で行われた火山ガスの緊急調査(東海大理学部大場武研究室提供)

 箱根山(箱根町)の大涌谷で火山ガスの定点観測を続けている東海大の大場武教授が20日、大涌谷周辺の噴気地帯で緊急調査を行った。採取した火山ガスの組成に顕著な活発化の傾向は表れておらず、「現時点では、(小噴火に至った)2015年ほどの大規模な火山活動ではない」と判断。「消長を繰り返しながら活動が続く可能性もある」ため、「今後の状況はまだ見通せない」と慎重な見方を示した。

 大場教授は15年4月に火山活動が活発化する前から、大涌谷と周辺の噴気地帯で火山ガスを月1回のペースで採取。ガス中に占める二酸化炭素(CO2)の硫化水素(H2S)に対する比率から、火山活動の盛衰を見極めている。

 活発になると比率の数値が上昇し、衰えるときには低下することが分かっているが、噴気地帯で行ったこの日の調査では、今月10日に実施した定期的な観測の結果と「ほとんど変わらなかった」という。

 気象庁が20日に発表した臨時の火山情報によると、17日は1回もなかった火山性地震は18日に43回、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)に引き上げた19日は74回に急増。「活発な火山活動が続いている」と判断しているが、20日は午後3時現在で4回に減少した。

 より小規模な地震も捉える県温泉地学研究所の観測でも、18、19の両日で計300回を超えていたが、20日は午後5時までで11回にとどまった。

 温地研の板寺一洋研究課長は「1日10回程度でも、通常よりは地震が多い状態であるため、引き続き注意深く監視していく」としつつ、「現時点では、15年の活動当初と比べると、活発な状況ではない」と指摘。加藤照之所長は20日の箱根山火山防災協議会で「(芦ノ湖西岸を中心とする)今回の地震活動は15年の時と地域が異なる。メカニズムの解明を進めたい」と述べた。

■事業者ら一時立ち入り

 箱根山(箱根町)の噴火警戒レベル2(火口周辺規制)への引き上げで立ち入りが禁止された大涌谷園地では20日、地元事業者らが町の許可を得て一時的に立ち入り、施設・店舗の点検や在庫商品の回収などを行った。

 園地には温泉供給施設や土産物販売店などがあるが、19日から立ち入り規制が敷かれた。20日は午前9時から約2時間、21事業者の計約120人が、町職員立ち会いの下、在庫食品の回収や設備のメンテナンスなどを行った。一時立ち入りは21日も許可される。

 周辺の旅館などに温泉を供給している箱根温泉供給株式会社(同町仙石原)は大涌谷での日常的なメンテナンスが必要だが、「立ち入り規制は仕方ない。入って作業をさせてもらえるよう町にお願いするだけ」と話している。

 町観光協会には19、20日の2日間で計約80件の問い合わせが寄せられた。規制エリアや全線運休となっている箱根ロープウェイの代替手段を尋ねる内容だったという。箱根温泉旅館ホテル協同組合によると、警戒レベル引き上げに絡む宿泊キャンセルは現段階で把握していないという。担当者は「宿泊客には分かる限りの情報を伝えて対応していきたい」としている。

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